【今村猛 鉄仮面の内側(19)】僕はNPBでの個人タイトルとは無縁でした。でも、なかなか取れない賞を取ったことがあるんですよ。
それも自力ではなく昆虫のトンボの力を借りての受賞でした。何のことかと思われるのは当然でしょうね。何にせよ僕はシーズンオフのテレビ番組で「プロ野球珍プレー大賞」を受賞しているんです。
2014年6月14日のロッテ―広島戦(QVCマリン)でのことでした。チームは8連敗中でしたが、6回に丸佳浩さんの3ランなどで4―3と逆転。その裏、ロッテの攻撃となった時に先発・大瀬良大地に代わり、僕がマウンドに上がりました。
ところが、その6回に僕は1点を失い同点に追いつかれてしまいました。4―4のまま7回にもマウンドに向かったのですが、その時に異変が起こりました。
僕の帽子のちょうど真後ろのNPBのマークのところに、どこからきたのか1匹のトンボがピタッと止まって羽を休めていたんです。もちろん、そんなことを僕は知る由もなく普通に投げました。
サブローさんを三振。クルーズを遊飛に打ち取ると、金沢岳さんを右飛で三者凡退です。前のイニングで打たれているのでイライラしていましたが、この回は何とか無失点に抑えて後の投手につなぐことができました。
このイニングで僕は17球を投げているのですが、その間ずっとトンボは僕の帽子に止まったままだったんです。すごいですよね。
守っている野手や捕手に声をかけられるでもなく、トンボをつけたまま投げ続けていました。その試合のテレビの実況アナも、解説をされていたロッテOB・清水直行さんも僕の投球よりトンボ談議に花を咲かせていたそうです。
実はトンボは「勝ち虫」という別名で呼ばれていてその昔、戦国武将がかぶとの前面の飾りにも使ったくらい縁起のいい昆虫なんですって。でも、試合で僕は打たれて、後続の投手も失点してしまい9連敗だったんですけどね。
7回、投げ終わってベンチに戻ったとき、テレビカメラマンの方がニヤニヤして僕を撮り続けているなとは思っていたんです。自分も打たれてイライラしていたので「どうしたんですか?」と聞くと返事が「トンボ」だったんで「何?」ってなったのを覚えていますね。
で、その模様をプロ野球珍プレー好プレーの番組で放映され、僕は珍プレー大賞をいただくことになったわけです。
ちゃんとトロフィーや副賞もあって、翌年の2月のキャンプで表彰してもらう予定だったんですよ。でも、その取材班が別の場所を取材しているうちに時間がなくなり、カープのキャンプ地に来られなかったんです。だから、実はそのまま何もいただいてないんです。
もちろん、怒ってなんていませんけどね。ある意味、僕は持ってますね。今でもあのトンボのおかげで受賞した珍プレー大賞を覚えていてくださるファンの方々もいるので、何かありがたいですね。












