【取材の裏側 現場ノート】新日本プロレスとスターダムの合同興行「Historic X―Over」(11月20日、有明アリーナ)は7102人(主催者発表)の観衆を動員し、盛況のうちに幕を閉じた。

 現プロレス界で男女のトップ団体同士による初の合同興行は、3試合のミックスドマッチやグレート・ムタの古巣ラストマッチ、IWGP・USヘビー級選手権、IWGP女子初代王者決定トーナメント決勝戦とバラエティーに富んだカードが並んだ。異性の対戦相手への攻撃が原則禁止だったはずのミックスドマッチでも、スターダムの舞華が新日本の棚橋弘至をバックドロップで豪快に投げるなど〝禁じ手〟が会場を大いに沸かせた。自身も舞華に強烈なビンタを叩き込んだ棚橋は「ルールを緩めてもいいんじゃないかな」とも提言した。

 同大会でムタのラストマッチのパートナーを務めたオカダ・カズチカも、本紙の取材に「これだけお客さん入ってますし、いいことだと思います。これから先は会社がどうしていくのか、たまに絡む方がいいのかもしれないですし。スターダムの選手が新日本のお客さんを持って帰るかもしれないですし、その逆もあるかもしれない。いい形だったと思います」と手応えを強調。

 だがその一方で、定期開催には慎重な判断が必要だと持論を述べた。「ダメな部分は直していって…ただ、あんまり頻繁にやるのは反対ですね。たまにやるから面白いし。五輪だってW杯だって毎年やってても面白くないじゃないですか。それくらい価値のあるものじゃないと何も変わらないと思います。当たり前ようにしょっちゅうやってたら『去年もこんな感じだったよね』ってなっちゃいますし」

 新日本は旗揚げ50周年のメモリアルイヤーとなった今年、1月にノアとの対抗戦を行い6月には米国・AEWと合同興行を開催した。近年は見られなかった他団体との積極交流は確かに話題を呼んだ。だが、それが日常化してしまうと普段の興行に物足りなさが生まれてしまいかねない。オカダも「みんなが集まるものって劇薬というか。そっちの方がいいじゃんってなっちゃうとお互い損だと思いますし」と、お互いの価値を高め続けることの重要性を再認識していた。

 オカダの言葉で印象的だったのは、新日本という団体への誇りをのぞかせつつも躍進を続けるスターダムの勢いを最大級に評価していた点だ。「IWGP女子のベルトもできたわけで、誰でも(新日本のリングに)上がってしまったら意味がないので。それでお客さんを持って行くくらいの気持ちでいるべきだと思いますし。スターダムで男子のベルトを作ってもいいわけですよね? 逆に言えば。分からないじゃないですか(将来的に)スターダムの方が大きくなるかもしれないですし」。開催前は賛否両論あった新日本とスターダムの合同興行は結果的に華やかな空間に新鮮な驚きが入り交じる、プロレス界の新たな可能性を満天下に示す大会だった。

(プロレス担当・岡本佑介)