記念すべき日に王道マットのエースが復活だ。全日本プロレス「3冠ヘビー級王座決定トーナメント」(23日、後楽園ホール)は宮原健斗(32)が制し第65代王者に輝いた。団体創始者ジャイアント馬場さん(故人)の誕生日に1年10か月ぶりの王座返り咲きを果たし、一躍旗揚げ50周年イヤーの主役に躍り出た最高男は、伝統の3冠王座再興を公約した。

 負傷による前王者ジェイク・リーの王座返上を受け開催された4選手によるトーナメント。宮原は諏訪魔を、本田竜輝は芦野祥太郎をそれぞれ1回戦で撃破し決勝戦で激突した。ファイナルベント(トルネードボム)を浴び窮地に陥った宮原だったが、最後は必殺のシャットダウンスープレックスホールドで頂点に立った。

 アクシデントで巡ってきたチャンスをものにして、一気にメモリアルイヤーの顔となった。「王者の返上が続いているので。王者がどしっとしてないといけないのは僕に課せられたテーマなのかな」と長期政権を誓う宮原は、団体として約18年7か月ぶりの開催となる9月18日の東京・日本武道館大会を見据える。

「そこに向けてファンの機運を高めることをしないといけないのが王者の役目。ジェイク・リーの引き分け(昨年10月の3冠戦)の続きもあるわけじゃないですか。ただ待ってるわけじゃなく、それまでも最高の全日本プロレスをつくり続けていかないと」

 そのためにも成し遂げるべきことがある。3冠王座の価値向上だ。業界が誇るメジャータイトルでありながら、近年はコロナ禍の影響もあり都内会場での王座戦がほとんど。昨年も3月に京都で1試合が行われただけだった。「僕が王者になって、日本全国に戻らないといけないなと思ってます。待ってる人がいるわけですから。地方でもビッグマッチをやって、3冠戦をやりたいなっていうのは展望としてあります」と目を輝かせた。

 もちろん王者としてやるべきことは他にもある。団体は昨年末にゼウスら主力3選手が退団するなど逆風が続く。それでも宮原は「そういう部分でも振り切った明るさで、感じさせないような試合をするしかない。逆に今日の本田選手のように若い選手にチャンスが巡ってきて、今までと景色は違うわけじゃないですか。選手層が薄いと言われますけど、僕はそんな印象もなくて『もっと声を上げろ』という気持ちですよ」と団体の活性化に強い意欲を示す。

「ジャイアント馬場さんの誕生日に僕が巻いたのも何か運命を感じますね。全てが今日、変わったと思います」。名門再建のかじ取り役として50周年イヤーをけん引する。