〝嫌がらせ大作戦〟でセ界をかきまわせ――。阪神は4日の楽天戦(甲子園)に1―2で敗戦。今季初の本拠地での実戦を白星で飾ることはできなかったが「1番・中堅」として先発出場した不動のリードオフマン・近本が3打数2安打1得点1盗塁をマークするなど、順調な調整ぶりをアピールした。

 初回の第1打席で初球を右前へ運んだ近本は、続く糸原の打席で二盗に成功。マルテの右飛の間に三塁に進むと、4番・佐藤輝の右前適時打で先制のホームイン。切り込み隊長による足を存分に使ったチーム鉄板の得点パターンは、今季も健在だ。

 近本は2019年、20年に盗塁王に輝いた。そして21年に同タイトルを獲得した中野を軸にした走塁攻勢は、今季も矢野阪神の明確なストロングポイントだ。昨季も12球団トップのチーム114盗塁を記録。虎の走塁革命をけん引してきた筒井壮外野守備走塁コーチ(47)も「(DH制のある)パ・リーグのチームに盗塁数で勝ることができたことは大きい」と手応えを口にする。

 だが、盗塁の難しさを熟知する同コーチは、いたずらに数そのものを増やすことには執着しない。「そうそう簡単に盗塁数を伸ばすことはできない。それよりもこだわりたいのは盗塁成功率。最低でも7割2分のラインをこころがけ、100盗塁以上を目指したい」と現実を見据えた目標を設定する。

 盗塁数が縦に伸びないのなら「横に枝葉を広げればいい」と語る筒井コーチが今季、重点的に取り組もうとしているのが、一歩目をクロスオーバーでスタートの構えだけを見せる「偽装スタート」を増やし、相手バッテリーへの揺さぶりの強めることだ。

「いい意味での〝嫌がらせ〟ですよね。スポットライトが当たらない場所で、どれだけ走者が動けるかが大切だと思っている」

 近本、中野だけでなく、梅野、佐藤輝など〝走れる駒〟を実際に多くそろえる阪神だからこそ、〝偽装〟は現実味を帯び、相手バッテリーのメンタルを効果的に削ることが可能になる。矢野政権ラストイヤー。虎はどれだけ走りぬくことができるのか、たどり着く先はどこになるのか。