【都市対抗野球】元巨人・香坂氏が復活ロード導く 異色の補強選手・永野投手

2022年07月26日 14時00分

永野を導いた全府中コーチ・香坂氏(東スポWeb)
永野を導いた全府中コーチ・香坂氏(東スポWeb)

【赤坂英一 赤ペン!!】現在開催中の、社会人日本一を決める都市対抗野球大会(東京ドーム)に、異色の経歴を持つ元プロ野球選手が出場していた。JR東日本(東京都)にクラブチーム全府中野球倶楽部から補強選手として参加した永野将司投手(29)だ。

 18日の1回戦、強豪・大阪ガス戦で、8回に4番手で初登板し、2安打無失点。その力投ぶりを全府中コーチ・香坂英典氏(64)が、ネット裏でじっと見守っていた。

 香坂氏は元巨人の投手で、引退後は球団の広報や編成担当を歴任。永野を社会人最高の舞台、都市対抗へ導くきっかけをつくったのは、この巨人の“元・名広報”だった。

 永野は2021年、4年間プレーしたロッテを戦力外となった。原因はパニック障害のひとつといわれる広場恐怖症。飛行機や新幹線など長時間移動に利用する公共交通機関に乗ると激しい不安に襲われ、目まい、動悸、過呼吸を起こすという。

 当時、香坂氏は巨人でトレードを担当するプロスカウト。そのころから、永野の持つポテンシャルの高さに注目していた。

「左の本格派で、体全体を使って質のいいボールを投げていましたね。150キロ出るし、コントロールもいい。変化球の球種も多く、特にカーブがよかった。経験を重ねれば、円熟味が増していい投手になると思った」

 しかし、道半ばにして永野は昨オフ解雇。12球団トライアウトに参加しても、オファーはなかった。そこで、同じころに巨人を退職し、全府中のコーチに就任した香坂氏が、永野の獲得をクラブに強く推薦したのだ。

「永野には独立リーグや社会人チームなどからも誘いがあったようです。でも、キャンプや遠征で長時間移動があるから、永野の広場恐怖症が障害になる。その点、関東圏で試合のできる全府中のほうが、彼にとっては理想的な環境でしょう」

 あわせてクラブのオーナーが経営する一般企業に社員として採用されることも決まった。新たな人生に踏み出した永野は4月10日、全日本クラブ選手権の準決勝に先発。8回163球を投げ、7安打1失点で勝ち投手となった。香坂氏が言う。

「監督は6回で代えようとしたんだけど、僕が8回まで投げさせましょうと言ったんです。プロのスタミナはすごいんだ、これが永野なんだというところをチームのみんなに見てほしかったから」

 そんな永野の奮投で、全府中は東京都1次予選優勝し、永野はMVPに選ばれた。香坂氏が導く復活ロードは、都市対抗のあともまだまだ続く。

 ☆あかさか・えいいち 1963年、広島県出身。法政大卒。日本文藝家協会会員。最近、Yahoo!ニュース公式コメンテーターに就任。「最後のクジラ 大洋ホエールズ・田代富雄の野球人生」「プロ野球二軍監督」(講談社)など著作が電子書籍で発売中。「失われた甲子園」(同)が第15回新潮ドキュメント賞ノミネート。他に「すごい!広島カープ」「2番打者論」(PHP研究所)など。

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