【取材の裏側 現場ノート】「救われた。やり返すぞっていう気持ちがより強くなった」。日本シリーズ第4戦当日の朝、ソフトバンクの松本裕樹投手(30)は内に秘めた闘志をそう打ち明けていた。
DeNAとの第1戦(横浜)で、今春のWBC日本代表としてともに戦った牧に同点ソロを被弾。続く第2戦では筒香に逆転3ランを浴びた。絶対的セットアッパーは、休養日を挟んで行われた第3戦(みずほペイペイ)はベンチ外。それだけに第4戦のマウンドは、数々の修羅場をくぐってきた右腕にとっても手に汗握る局面だったはずだ。打順の巡りは第2戦と全く同じ。渡会、牧、佐野を三者凡退に封じた。
救われた――。8回に痛恨の逆転3ランを浴びた第2戦、チームは負けなかった。9回一死から代打・山川が起死回生の同点ソロ。延長10回には途中出場の川村が値千金の決勝弾を叩き込んだ。まさに形勢逆転の2発。冒頭の言葉は、ベンチ裏で見守っていた松本裕の率直な思いだった。
衝撃的な場外弾で背中を押した山川は「いつも助けてもらっている。それはもう、みんなが同じ気持ち。だから、何一つ思うところはない」と、チームの思いを代弁。守護神・杉山は「松本さんが打たれたところで信頼が揺らぐことはない。僕はいつも通り、近くにいようと思った」と当時の心境を振り返った上で「同じ巡りで三者凡退。本当にすごいなって思ったし、めちゃくちゃうれしかった」と自分のことのように喜んだ。
松本裕が担う8回は「野球の妙」が詰まっている。強力な上位打線から始まることが多く、競った展開でマウンドに上がる中継ぎ投手の精神的疲弊は計り知れない。〝抑えて当たり前〟と捉えられがちな過酷なポジションで、4年連続50試合以上に登板。今季はリーグ最多の58試合で防御率2・22だった。
2年連続の「最優秀中継ぎ投手」のタイトルには一歩及ばなかったが、試合が動きやすい「8回の攻防」を食い止めてきた。万雷の拍手に応えて、今シーズン最終登板を見事な三者凡退に封じた松本裕。日本一を祝うビールかけで見せた屈託ない笑顔が印象的だった。
(ソフトバンク担当・福田孝洋)












