巨人が土俵際から首位・阪神の背中を捉えた。逆転優勝への機運が高まる中、12日は本拠地・東京ドームで今季最後の「伝統の一戦」。だがチーム内から聞こえてくるのは、威勢のいいV宣言ではない。「優勝」を意識から遠ざけ、目の前の一戦に全神経を注ぐ。
8月末の甲子園では阪神に屈辱の3連敗。最大5ゲーム差まで離され、自力優勝も消滅した。阪神に優勝マジックが点灯し、決着ムードが漂った。ところが9月に入ると巨人は8試合で6勝2敗。阪神は2勝4敗と失速し、11日時点で1・5ゲーム差まで縮まった。
それでも巨人に浮ついた空気はない。10日の中日戦(東京ドーム)に勝利後、橋上秀樹監督代行(60)は「皆さんが注目する大事な試合だと思います。われわれはまだ追う立場。相手はタイガースですが、目の前の試合をいつも通りしっかり勝ち切る。そのことだけを考えてやりたい」と12日の直接対決も含め一戦必勝を強調した。
「首位奪取」「逆転優勝」が現実味を帯びても、選手やチーム関係者は慎重だ。「まだ先の話」「今は考える段階ではない」と〝優勝〟を口にしない。
単なる謙遜ではない。前半戦終了時に阪神と同率首位に立った際も、余計な意識を避けるため一部では「優勝」が禁句だった。その戒めは今、チーム全体に広がる。チーム関係者は「意識するなと言っても難しい。ただ、ここまで来れば浮き足立った方が負ける。阪神側にも焦りはあるはずで、こちらは過度に意識せず、普段通りの野球を続ければ結果は最後についてくる」と真意を明かす。
思い起こされるのが、原辰徳氏(68=巨人オーナー付特別顧問)が監督を務めた2008年だ。最大13ゲーム差をひっくり返した「メークレジェンド」でも、原氏は優勝を声高に語らず、一戦必勝を徹底した。
首位を追い詰めても、ゴールばかりを見ない。勢いに酔わず、相手の失速にも心を乱されない。18年前にも通じる〝無我の境地〟を貫く平常心こそが、新たな逆転劇を呼び込む鍵となる。












