札束を積んでも、勝ち星までは買えなかった。MLB屈指の巨額投資を続けながら、今季はナ・リーグ東地区の最下位に沈むメッツ。その〝焼け野原〟で来季への思わぬ光明となっているのが、先発から救援へ配置転換された千賀滉大投手(33)だ。

 米老舗誌「スポーツ・イラストレイテッド」の電子版「ON SI」は4日(日本時間同日)、メッツについて「2027年シーズンに向けて対処すべき4つの懸念事項」と題し特集した。今季のチーム編成に関し「メジャー史上でも最も高額な失敗シーズンの一つ」になると酷評。6月26日(同27日)に監督交代へ踏み切って以降は持ち直したものの、2日(同3日)のレイズ戦終了時点で63勝77敗。勝率5割を大きく下回り、ナ・リーグ東地区最下位に沈んでいる。

 そんな泥沼の中、終盤に意外な安定感を見せているのがブルペンだ。トレード期限前後に救援陣を解体したため大幅な補強が必要とみられていたが、昇格組が踏ん張り、何より〝急造守護神〟の千賀が機能。8月31日(同9月1日)のレイズ戦で5セーブ目を挙げ、救援転向後は5度のセーブ機会をすべて成功させた。トレード期限後は10回3分の1を投げ、防御率1・74、12奪三振。今季通算では0勝9敗、防御率7・36と苦しんできた右腕が、役割変更を境に別人のような結果を残している。

 先発の「ON SI」も千賀について、ブルペン入り後の活躍を「大発見」と高く評価。デービッド・スターンズ編成本部長(41)も8月、救援への適応ぶりを「本当によくやってくれている」と称賛している。保証契約を2027年まであと1年残しているだけに、このまま戦力化できれば冬の補強費と補強枠の両面で大きい。

 同サイトが挙げた来季への課題は明快だ。先発陣にはエース級と3、4番手級のベテラン2人を加え、ブルペンは千賀ら現有戦力を見極めた上で左腕1人と実績あるセットアップ投手を補う。一方、野手では固定できなかった内野の一角を埋め、40人枠を整理してインパクトのある打者を迎える余地を作る必要があるとした。

 今季の大失敗を札束だけで塗り直せば、同じテツを踏みかねない。だからこそ、内部から突然現れた〝守護神・千賀〟の価値は小さくない。球団も来季の勝負どころを託せる救援投手になれるかを見極めている。崩壊したメッツの再建図、その最初の一本の柱は「ゴーストフォーク」を武器に9回を締める日本人右腕になるかもしれない。