「終わりかけた右腕」が、ニューヨークで勝利の方程式を担い始めた。札束を積んでも勝てなかったメッツを救っているのは、どん底から這い上がった男たちだ。

 米ニュージャージー州地元メディア「ノース・ジャージー・コム」は20日(日本時間21日)の記事で、ダニエル・ドゥアルテ投手(29=メッツ)の壮絶な再生物語に焦点を当てている。2024年4月に2度目の右ヒジ手術を受けた際、周囲からメジャー復帰の可能性は「五分五分」と見られたという。18か月にも及ぶリハビリは、野球人生そのものをのみ込みかねない長さだった。

 転機は昨冬。母国メキシコのウインターリーグで24回を投げて自責点0、5セーブをマークし、自信を取り戻した。その後、メッツから届いたのはマイナー契約のオファー。「チャンスさえあれば、まだメジャーで投げられることを証明できると分かっていた」と同メディアに激白。トミー・ジョン手術、骨棘、腱炎など度重なる故障を振り返りながら「今は何の問題もなく、健康で、好きなことをやれているのがうれしい」と胸中を明かした。

 今季は3Aシラキュースから昇格し、トレード期限前後の大量放出で再編されたブルペンで存在感を一気に高めた。19日(同20日)まで16試合、21回1/3で1勝0敗、2セーブ、防御率0.84、WHIP0・61。期限後は8試合連続無失点で2セーブ、4ホールドを挙げている。グリーン暫定監督も「緊迫した局面でも冷静さを保てる」と絶賛した。

 本人も終盤の修羅場を歓迎する。「失敗は許されない。そういう状況では、うまくやるか、失敗するかしかない」。90マイル台後半の速球にスイーパー、シンカー、チェンジアップを織り交ぜ、今季は鋭く遅れて変化するカッターが大きな武器となった。

リリーフで復調の兆しを見せているメッツ・千賀滉大(ロイター)
リリーフで復調の兆しを見せているメッツ・千賀滉大(ロイター)

 その先に待つのが千賀滉大投手(33)だ。先発で苦しみ、ブルペン転向後は負傷離脱した守護神デビン・ウィリアムズに代わって4セーブ。期限後11勝4敗と息を吹き返したメッツで、ドゥアルテから千賀へつなぐ〝再生組〟が新たな勝利の方程式になりつつある。チームは58勝70敗でワイルドカード圏まで10ゲーム差と依然厳しいが、少なくともブルペンには確かな光が差している。

 大型補強を重ねても沈んだチームを浮上させているのが、一度はキャリアの死地をさまよった2人という皮肉。ニューヨークで起きている奇跡は、高額年俸では買えない執念が生んだものなのかもしれない。