阪神・藤川球児監督(46)が公の場で投じた一石が、球界内に大きな波紋を広げている。

 主力の森下が29日の巨人戦(甲子園)で左前腕部に死球を受けて退場を余儀なくされた試合後に「4月の段階からNPBの選手全員に肩甲骨から手首にかけたプロテクターを装着させるのはどうでしょうかという相談をしていたが、なかなか許可が出ない」と発言。「先人たちはそれを避けるのも技術だと言っていますが、今の時代はスピードが全然違う」と死球による故障を防ぐための防具導入を訴えていた。

 トレーニング理論や動作解析技術の進歩もあり、NPB投手の平均球速は年々上昇。それだけに藤川監督の言葉に共感する声は猛虎の外部にも多い。在京球団の主力打者は「僕も今年は何個も死球を受けていますが、ピッチャーの球が避けきれないほど年々速くなっているとは感じる。長期離脱や選手生命のリスクを考えればプロテクターの導入はありがたいですね」と語る。

 タイトル獲得歴も豊富なセ球団のコーチも「優れた素質がありながら、インサイドを克服できず開花できなかった選手を過去に何人も見てきた。故障のリスクも考えればプロテクターの導入は賛成だね。森下のように何度当てられても踏み込んでバットを振りにいける選手はまれだよ」と肯定的だ。

 一方で慎重論もある。「NPB内でより議論を深める必要があると思う。プロテクターが導入されれば、その性能に安直に頼り、極端に内側へ踏み込みながら打つ選手が増えることは想像に難くない。その時、野球界全体にどのような影響が及ぶか…」と語ったのは別球団の現役指導者だ。

 防具によって死球への恐怖や故障リスクが軽減されれば、打者はこれまで以上に内角へ踏み込みやすくなる。投手がインサイドを攻める効果も変わり、長年形成されてきた投打の駆け引きそのものが変質する可能性もある。

 プロテクターへの依存が高まり、藤川監督が言及した〝避ける技術〟が軽んじられる懸念も残る。頭部など防具では守り切れない箇所への投球に対し、瞬時にかわす技術まで失われていいのかという問題だ。

 スポーツ界では新たなギアの登場が選手を守る一方、技術や戦術、時には競技そのものの姿まで変えてきた歴史がある。選手の安全と野球本来の攻防をどう両立させるのか――。