真夏の夢舞台で、虎将が振ったのは采配ではなく、球界の未来を見据えた〝バトン〟だった。「マイナビオールスターゲーム2026」第1戦が28日、東京ドームで行われ、藤川球児監督(46=阪神)率いる全セは5―7で全パに惜敗した。プレーボール前から話題を呼んだのが、球宴初指揮となった虎将による〝オーダー委任〟だ。監督の専権事項である選手起用を、あえて他球団のベテランに委ねた真意と背景は――。

「勝てる布陣で臨みたかった。昨年も(全セは)2敗していましたからね。意地を見せてくれたかな。いいゲームにはなったと思います」。〝お祭り〟としての側面が強い球宴とはいえ、交流戦や日本シリーズで何度も苦杯をなめさせられてきたパ勢へのリベンジはならず、試合後の藤川監督は悔しさをにじませた。

 この日の打撃オーダーの一部は、すでに名球会入りを果たしている巨人のリビングレジェンド、坂本勇人内野手(37=巨人)に。継投策は今も竜のエースとして君臨するベテラン左腕、大野雄大投手(37=中日)に託した。

記念撮影する(左から)坂本勇人、大野雄大、柳田悠岐
記念撮影する(左から)坂本勇人、大野雄大、柳田悠岐

 その真意について指揮官は「プロ野球界の未来を考えた中、2人の選手…。パ・リーグには柳田選手とかもいますけど、やはり誇らしいものと技術を持ち合わせている。選手たちには学んでほしい」と説明。ソフトバンクの柳田悠岐外野手(37)も引き合いに出し、百戦錬磨のベテランへの敬意と、未来への〝投資〟を込めた一手だったと語った。

 少子化に伴う競技人口の縮小や、若い世代のMLB志向の高まりによる人材流出など、令和の球界には新たな問題が山積みだ。藤川監督自身もNPBの未来に強い危機感を抱き、これまで何度も警鐘を鳴らしてきた。

 就任直後の2025年1月に行われた12球団監督会議では、早くも次世代へ向けた普及活動の強化や、テレビ、メディア、SNSの活用法に言及。新米指揮官だった当時から踏み込んだ発言をいとわなかった。

 記憶に新しいところでは、死球禍で荒れに荒れた広島3連戦(17~19日、マツダ)。17日の試合後には投手の技術向上の必要性を強調し、19日には「野球界をいかに長く残していけるかっていうのが、実は今一番問われている」と冷静に振り返った。「監督はマネジャー」とのポリシーの下、コンディション管理に強くこだわり、選手生命の持続可能性を今も模索している。

 07年入団の坂本も11年入団の大野も、ともに現役選手として藤川監督としのぎを削り合った経歴の持ち主。両者がいずれ古巣のコーチや監督に就任した時、甲子園のベンチにはまだ、火の玉指揮官は座っているのだろうか――。「過去と未来をつなぐ」ことに重きを置く虎将の〝粋な計らい〟は、2人が指導者になった際の貴重な糧となるかもしれない。