ピンストライプの記憶が、仙台で思わぬ脚光を浴びている。主砲不在でも、ブロンクスの勢いは止まらない。ヤンキースは16日(日本時間17日)、本拠地ヤンキースタジアムでホワイトソックスに12―2で大勝した。右第1肋骨の疲労骨折でアーロン・ジャッジ外野手(34)を長期離脱で欠きながら、ライス、ゴールドシュミットらの一発攻勢で突き放し、44勝27敗でア・リーグ東地区首位をキープ。王座奪回を狙う名門は、傷だらけでも前へ進んでいる。

 そんなヤンキースの現在地を伝える米メディア「ヘビー」が同日の記事で、なぜか海の向こうでプレーする〝元ブロンクスの一員〟に焦点を当てた。楽天で2年目を迎えたルーク・ボイト内野手(35)だ。2018年途中から21年までヤンキースでプレーし、コロナ禍で短縮シーズンとなった20年には22本塁打でア・リーグ本塁打王に輝いた右の大砲。かつてピンストライプのユニホームをまとい、ジャッジらと強力打線を形成した男が、今は異国の地で再起を探っている――。米側がそうした切り口で取り上げること自体、ヤンキースブランドの残像の強さを物語っている。

 ただし、現在のボイトを取り巻く空気は甘くない。昨季は途中加入ながら67試合で打率3割、13本塁打、39打点をマークし、貧打に苦しむ楽天打線の救世主となった。だが今季は20試合で打率1割1分9厘、0本塁打、3打点。15日に一軍再昇格を果たしたものの、2試合で8打数無安打3三振と結果を残せず、18日に出場選手登録を抹消された。球団は19日にコンディション不良と発表し、現在は二軍で状態を整えながら再昇格のタイミングを探る立場にある。チームも低迷し、三木肇前監督(49)が休養。17日には吉井理人新監督(61)の就任が正式発表となり、仙台市内で会見も行われ、19日のロッテ戦(ZOZOマリン)から指揮を執ることが決まった。

 新指揮官は近鉄、ヤクルト、メッツなど日米でプレーし、ロッテ監督や侍ジャパン投手コーチも歴任した。MLBにも精通する吉井新監督にとって、ボイトの実績は軽視できない一方、現状の数字だけを見れば特別扱いできる段階でもない。二軍で状態と打撃内容を見極めながら、どのタイミングで一軍へ戻すのか。それともチーム再建を優先し、別の選択肢を探るのか。新体制には早急な判断が求められる。

 ジャッジ不在でも勝ち続ける古巣と、仙台で居場所を懸ける元本塁打王。米メディアが拾い上げた奇妙な接点は、楽天の新体制にとっても小さくないテーマを浮かび上がらせている。吉井新監督がボイトをどう生かすか。その判断は、沈むチームの浮上策を占う試金石にもなりそうだ。