開幕白星を支えたのは、グラウンドの9人だけではなかった。第108回全国高校野球選手権大会第1日(5日・甲子園)で仙台育英(宮城)が札幌日大(南北海道)を3―1で撃破。ベンチでは元巨人捕手を父に持つ学生コーチ兼マネジャー、星よつはさん(17=3年)が〝もう一人の戦力〟としてナインを鼓舞していた。

 仙台育英は3投手の継投で札幌日大打線を3安打、14奪三振に封じた一方、10四死球を与えて再三のピンチを招いた。須江監督は「緊張感のある、思い出に残る試合でした」と振り返りつつ、「運がよかった。この先はもっと苦しくなるので、もっと調整が必要」と表情を引き締めた。

 薄氷の勝利とともに全国の視線をさらったのが、記録員としてユニホーム姿でベンチ入りした星さんだ。スコアを付け、水分補給に気を配り、声を張って選手を支えた。その姿が中継に映るたびにSNSでも反響が広がり、早くも〝甲子園のマドンナ〟として注目を集めている。

 華やかさだけではない。父は仙台育英OBで、巨人、西武で捕手としてプレーした星孝典氏(44)。現役引退後は西武、楽天でコーチを務め、現在は東北学院大監督として指導に当たる。星さんも幼少期から父の背中を追って野球に親しみ、選手経験を経て名門の門をたたいた。受け継いだ〝野球DNA〟はベンチワークにも脈打っている。

 その存在は開幕前から他校にも知れ渡っていた。ある同学年の部員は、動画で星さんを知った他校選手が練習試合後に本人を話題にすることが珍しくないと明かし、「今では、よつはが『育英の顔』ですね」と語る。

 だが、校内では野球部員にとって意外なほど〝遠い存在〟でもある。仙台育英は所属コースによって、普段授業を受ける場所が宮城野校舎と多賀城校舎に分かれている。部員によれば、星さんと多くの選手は別々の校舎で学校生活を送り、グラウンドを離れると顔を合わせる機会も限られるという。部内は恋愛禁止で、いわゆる「恋バナ」もご法度。他校の球児から熱い視線を浴びる〝育英の顔〟は、身近なナインにとっても近くて遠い〝高嶺(たかね)の花〟なのだ。

「前例がない中で、いろいろ考えて行動してくれている。いいマネジャーです」と前出の部員。須江監督も「星よつはさんはかなりの戦力。間違いなく今日勝った理由の一つ」と評した。

 普段は別々の校舎で過ごすマドンナが、甲子園では同じユニホームをまとい、同じベンチで戦う。その存在が、頂点を目指すナインの背中を強く押している。