韓国で42歳右腕の〝執念〟が、ついに大統領の言葉まで動かした。韓国有力紙「朝鮮日報」によると、李在明(イ・ジェミョン)大統領は16日、自身のXでWBC韓国代表の盧景銀(ノ・ギョンウン)投手(42=SSG)を称賛し「単なる勝利を超えて、『遅くても諦めるな』というメッセージを感じた」と投稿した。WBCでの一投手の快投が、スポーツニュースの枠を飛び越え、国民への激励材料として語られる異例の展開になっている。

 発端は9日のWBC1次ラウンドC組・オーストラリア戦(東京ドーム)だった。韓国は先発の孫柱永(ソン・ジュヨン)投手(28=LGツインズ)が1回終了後に右肘の痛みを訴える緊急事態に見舞われたが、2番手で急きょ登板したノ・ギョンウンが2イニングを無失点でしのぎ、流れを立て直した。韓国はそのまま7―2で勝利し、2009年以来17年ぶりの1次ラウンド突破を決めた。ベンチが崩れかけた瞬間に、最年長右腕が試合をつなぎ止めた格好だ。

 ノ・ギョンウンは1984年3月11日生まれ。斗山でプロ入りし、ロッテを経て、一時はユニホームを脱ぐ危機にも追い込まれた。それでもはい上がり、近年はSSGの救援陣を支えるベテランとして再生。オーストラリア戦後には「自分がなぜ代表に選ばれたのか証明できてうれしい」と胸をなで下ろしたという。韓国では150キロ超が当たり前、160キロ台すら珍しくない時代に、球威ではなく経験、制御、間合い、そして場数で勝負する42歳の存在感が改めて脚光を浴びている。

 1次ラウンドを突破した韓国は米フロリダ州マイアミに渡り、ローンデポ・パークで行われた13日(日本時間14日)の準々決勝でドミニカ共和国に0―10の7回コールド負けを喫し、快進撃はそこで止まった。だが、敗退後もノ・ギョンウンの名前だけは韓国国内で生き続けている。

 勝敗以上に、人は何に心を動かされるのか。代表復帰を「遅すぎた物語」にしなかった42歳の右腕は、韓国球界にとっての切り札であるだけでなく、不透明な時代を生きる社会そのものへのメッセージにもなった。大統領がそこに国民的な「希望」を見たのも、決して大げさではない。