敗戦ムードをのみ込んだ甲子園の熱気は、主砲の一振りで頂点に達した。阪神は20日の中日戦(甲子園)に8―7でサヨナラ勝ち。最大7点差をひっくり返す劇的な展開で2連勝を飾った。

 試合を決めたのは森下翔太外野手(25)だった。7―7で迎えた9回に竜6番手・牧野の直球を完璧に捉えると、打球は左翼スタンドへ一直線。11号サヨナラ弾に甲子園は沸騰し、ベンチを飛び出した虎ナインから手荒い祝福を受けた。

 森下は「うれしかったですし、チャンスで凡退しすぎてよろこび方を忘れ気味だった。少しスカし過ぎたと反省してるんですが、ホントにきょう勝ってよかったです」と笑顔をはじけさせた。

 その姿に強い刺激を受けていたのが、ドラフト1位ルーキーの立石正広内野手(22=創価大)だ。試合後は思わず「ホームラン打ちたいですね」と本音を漏らし、「打つ気はしましたけど、(9回に打席が)回ってこいと思ってました。そういう場面で一発出せるようにしたいですね」と力を込めた。

 森下にとって立石は、プロ入り前から交流のある後輩でもある。ただ、甘やかすつもりはない。立石は前日19日の中日戦(倉敷)でプロ初スタメンを果たし、プロ初安打を記録。この日も7回一死一塁で中前打を放った。それでも森下は「試合に出たら打つっていうのも、自分の中では普通というか当たり前というか」と言い切った。

 入団前にはタンブラーを贈るなど気にかけてきた間柄だが、初安打祝いについても「どうせ打つんで、もういらないっすよ。ルーキーですけど、別にその次元にいないんでアイツは」とニヤリ。さらに「アドバイスなんてしてないし、アドバイスされる方なんで(笑い)。スタメンで使われたら、タイガースのクリーンアップとか打線として機能していくべき人」と、新人扱いではなく主力級の働きを求めた。

 立石は入団後、3度のケガに苦しんできた。それでも背番号1は「実戦慣れして調子を整えていく選手。試合に出ながらでも直せるところは直せるし、タフなんで。試合に慣れていったら体も強くなると思う」と断言した。

 大逆転劇を締めくくった主軸から〝主力扱い〟を受けたドラ1ルーキー。森下の一発が生んだ熱を、今度は立石が自らのバットで引き継ぐ番だ。