店に通い続ける決め手を聞くと、TAJIRIは「店の人との相性」と言い切る。料理の印象より先に、人との関係性で居心地が決まるという感覚だ。
具体的に語るのが、久留米で出会った一軒だった。まだ訪れた回数は多くないが、「すごくいい店だな」と感じたのは、知り合いに連れられて入った時の空気感が強く残っているからだという。店に立っていたのは、ビートたけしの映画『座頭市』に出てきそうな年配の店主。寒そうに体を震わせながらも、黙々と店を切り盛りし、その場の雰囲気をつくっていた。
聞けば、元バーテンダーで、今も九州のバーテンダー関係の世界では知られた存在らしい。勧められたのはハイボールだった。細いグラスに、見たことのない形の氷がぎっしり詰められ、「まず1口、1杯飲んでください」と言われた。その通りにすると「めちゃくちゃうまい」と感じたという。臭みがなく、スッと入る。作り方には、グラスや氷、比率など、細かいこだわりがあるようで「ちゃんと測ってやってる感じがした」と振り返る。
店の外観や内装は、決してきれいとは言えない。それでもTAJIRIが引かれたのは、店主との相性が合っていたからだ。「ああいう人、好きなんですよ」。注文の仕方や振る舞いに癖があり、客を選ぶタイプの店だと感じつつも、TAJIRI自身は自然に受け入れられたという。
さらに、その店では、飲み干すと次を勧められることも多い。おごる側とおごられる側の境界が曖昧になり、気づけばやり取りが続いていく。「きりがない感じになるんですよ」と笑うが、それも含めて、その店らしさだと受け止めている。
味や清潔感といった分かりやすい基準だけでは測れない。誰がそこに立ち、どう向き合ってくるのか。TAJIRIにとって、行きつけになるかどうかは、そうした「人との相性」が決め手になっている。













