店を選ぶ最初のスイッチは、TAJIRIにとって「直感」だ。狙っている感じがないのに、さりげなく個性がにじむ。そんな店ほど、入ってみたくなるという。

 強く主張していないのに、違和感だけが残る。その距離感が、逆に入り口になる。「直感に引かれて、何か狙ってなさそうな店が、さりげなく個性が浮き彫りになってる。そういう店が好き」。派手な演出や分かりやすい売りよりも、「意図が見えすぎない」ことが気になるポイントだ。本人は「いたるとこにそういう店」があるとも話し、街の中でふと目に留まる瞬間を大事にしている。

 古い店にも、同じ引力がある。「古いってことは、長くあるってことじゃないですか」。長く続いていること自体が、店の空気を物語る。一方で、新しくても引っかかる瞬間があるという。外観に力を入れていないように見えるのに、看板や文字だけが妙に目立っている。白い壁の新しいラーメン店なのに、赤い板に白い文字で「ラーメン」とだけ書かれ、それがやたら大きい。そういう「アンバランス」に、つい足が向く。

 具体例として挙げるのが、ラーメン二郎だ。うまいと言われる店ほど、黄色い看板があるだけで、写真や説明が多くない。入りやすさを演出する努力をしていないように見えるのに、結果として人を呼んでいる。その不思議さが面白いという。いわゆるインスパイア系で、必要以上に書き立てる店もあるが、「書いてない方がそうなる」と感じる場面もある。余計な情報がない分、こちらが勝手に想像してしまうところも含めて、引っかかりになる。

 TAJIRIが言う「直感」は、派手さに反応するというより、店の「素っ気なさ」や「ふぞろいさ」に反応している。さりげないのに奇妙で、古さやアンバランスがそのまま残っている。そういう店に出会うと「気になって入っちゃう」。直感で入った店が必ず当たりとは限らないが、まず扉を開けたくなるかどうかが出発点になる。味の評価より先に、店との距離感が最初から整っているかどうか。そこに、行きたくなるかどうかの基準がある。