巨人が30日の中日戦(バンテリン)に2―0で勝利。先発の戸郷翔征投手(25)は6回無失点の好投で6月8日の楽天戦(東京ドーム)以来、52日ぶりとなる今季3勝目を挙げた。今季はプロ7年目にして初めてとなる「大きな壁」にぶち当たった右腕。大不振を迎えた若きエースには世間から厳しい言葉も投げかけられたが、決して逃げることはなかった――。

 エースの意地を見せた。不調により二軍再調整が続き、この日が約1か月ぶりの一軍マウンドとなった戸郷。初回から田中幹の二塁打と細川への四球で二死一、三塁と早々にピンチを招いたが、続くボスラーを二飛に打ち取って無失点スタートとした。

 その後も3回まで毎回走者を背負う展開となりながら要所を締める投球で失点は許さず。打線から2点の援護も受けると、6回109球でスコアボードに「0」を並べる4安打7奪三振の力投を見せ、チームの5割復帰に一役買った。

 戸郷は「まだまだ長いイニングを投げたいし、迷惑をかけた分、しっかりチームに貢献したい」と後半戦での巻き返しを宣言。一方、阿部監督も「何とか粘って粘って。結果的にいい投球でしたね」と復活を果たしたエースの粘投をたたえた。

 もがき苦しんだ1か月間だった。2年連続で開幕投手を任された戸郷だったが、今季は投球内容が安定せずに2度の登録抹消を経験。「こんなに苦しんだシーズンは初めてだった。何をしていいかもわからなかった」と振り返るほど思い悩んだが、巨人のエースとしてのプライドは決して捨てることはなかった。

 今夏のある月曜日のこと。投手練習を終えた後、戸郷は強い日差しが差す中で20分以上もの間、ファンに臨時のサイン会を行った。その真意を尋ねると「月曜日の熱い中なのに、自分たちと同じように球場まで来てくれて、ユニホームも持ってきてくれて、練習後までこうして待ってくれている。日々の試合もそうですけど、普段は遠くてなかなか来られない人だっているし、病気で来られない方だっている」。その上で「そういった方たちがわざわざ来てくれて直接応援の言葉をかけてくれるのは本当に力になりますから」とも続け、笑顔で明かした。

 ただ、ファンや世間から投げかけられた言葉は穏やかなものだけではない。前半戦でわずか2勝止まりと不振が続いた今のエースには当然、厳しい言葉も投げかけられた。それでも戸郷は「それも応援してくれるからこそ。自分でも記事の反応などを見るようにしていますし、それを受けて特に気にしたりとかはないですけど、それも巨人の選手でいさせてくれるからこその経験ですし、それもありがたいなと思ってやらせていただいているんです」と正面から受け止め、叱咤激励の言葉からも目をそらすことはしなかった。

「巨大な壁」を乗り越えて復活の白星を挙げた戸郷。エースの矜持を持ち合わせた若武者が後半戦で巻き返しとなるか。