【女子プロレス最強レスラーの告白 神取忍 お前の心を折ってやる(1)】泣く子も黙る“ミスター女子プロレス”神取忍(60)が半生を振り返る新連載「お前の心を折ってやる」がスタート。柔道世界3位からレスラーに転向し、ジャッキー佐藤や北斗晶、ブル中野、天龍源一郎らと伝説の名勝負を繰り広げた。群れること、理不尽な要求を嫌い、自分の心だけに忠実にマット界を生き抜いてきた。その足跡とは――。
1964年に横浜市本牧の辺りで生まれた。大人になってから、子供のころの友達から「ああだったよね」「こうだったよね」って言われてもすっかり忘れている。ひどい時には「お前、誰だっけ?」って聞き返して、みんなに怒られてるほどだよ。こういう機会がないと、自分で過去を振り返ることはしないからね。前しか見ないんだよ。
意外かもしれないけど、昔は無口な子だったんだ。例えば、家族が自分にだけご飯をよそわなくても「ご飯ないよ」と言えないくらいおとなしい子だった。理由は後になって分かった。小学校に入る前かな。近所で土砂崩れがあって、家が半壊した。夜中にすごく雨が降って「怖いね」って言っていたんだけど「ガチャガチャ!」って大きな音がしたと思ったら家の中に土砂が流れ込んできた。「えー!」。そこからは記憶がない。もう途切れ途切れなんだ。
結局、家に住めなくなって、隣の家に避難させてもらった。そこのお姉さんとしか話さなくなった。相当なショック、トラウマがあったんだと思う。そして本当にしゃべらない子になった。
きょうだいは年子の兄と6歳離れた姉。遊んでも何をやっても一番下だからいわゆる“みそっかす”。一人前に扱ってもらえなくて。じゃんけんで勝とうが負けようが関係ない。つまんない幼少期だよ。家は典型的な昭和の家庭。怖い父親がいてさ。名前が「小波」と書いて「さざなみ」っていうんだ。母親は「方子」と書いて「まさこ」と読む。なんだか難しい子供が生まれそうな名前だよね。うちの教育方針は、何か悪いことしたら捨てられちゃうんだ。本当に捨てられるんだよ。現代だったら大問題だ。
最初は兄貴が捨てられた。悪いことをすると、まず押し入れに入れられたりするんだけど、最後はお米が入っているような麻袋に入れられる。「もうお前はうちの子じゃない!」って麻袋のまま車に乗せられて、どこかに連れていかれちゃうの。父親が「最後、みんなに別れのあいさつしろ!」って。「ええ、お兄ちゃん! 捨てられちゃうよ~、怖いよ~」と思ってた。でも不思議なんだけど、ちゃんと家に帰ってくるんだ。「ごめんなさい、ごめんなさい」って泣きじゃくってね。
だから「どうやって帰ってくるの。お兄ちゃん?」と、おびえながらも思っていたんだ。そして、幼稚園に通っていたころ、とうとう自分の番が来てしまった。












