【炎の飛龍 藤波辰爾の軌跡 一心己道(最終回)】長きにわたってプロレス人生を振り返ってきたこの連載も、今回が最終回になる。師匠のアントニオ猪木さんが亡くなり、長州力をはじめとした数々のライバルたちがリングを去った今も、俺は現役のプロレスラーとして戦い続けている。

「プロレスとは人生」と語る藤波
「プロレスとは人生」と語る藤波

 2024年11月22日のドラディション後楽園ホール大会では新日本プロレスの高橋ヒロムとシングルマッチで戦った。自分がジュニアヘビー級からここまで来たルーツを考えた時、今の新日本ジュニアを味わいたい、そして自分自身もインパクトのある戦いをしたいという思いをかなえてくれるのが彼だと思った。

 ヒロムは体は小さいながらパワーもあって「ヘビー級には負けないぞ」という気持ちでやっていた、かつての自分と同じプライドを感じた。最後はTIME BOMBで負けはしたんだけど、やっぱり「新日本のジュニアは強いな」って安心感があったね。

 ヒロムにしろ、オカダ・カズチカにしろ、棚橋弘至にしろ、俺は全員とリングの上で肌を合わせて、新日本の道場の教えはしっかり残っているなと思った。少し前に前田日明が「今のレスラーは受け身を取れてません」と発言して議論を呼んだ。前田が思っていること、言いたいこと、それは俺も分かる。でも、それを言っていたら「意味がないじゃないか」とも思うんだ。

 自分たちがやってきた時代と世界だから、それを肯定するのは当たり前だと思う。でも今は今なりに彼らも道場でしっかり練習し、心得た上でリングに上がっている。よほど目に余るならともかく、今の選手らを認めてあげないとお互いに立ち行かなくなってしまう。

 辛口としての前田のエールは分かる。引退していたら同じことを言ったかもしれない。でも俺は実際に肌を通してやったから言う資格があると思っている。今のプロレスも面白いし、昔のようにお客さんを感動させることができるんだ。時代とともに変わるものは当然ある。今の選手たちも昔のプロレスにリスペクトを抱いていることを、俺らの世代はもっと分かってあげるべきだと思う。

 71歳になった今でもプロレスが好きだし、これからも自分のために心置きなくプロレスを味わいたい。それと同時に、今の選手たちに「ネバーギブアップ」の言葉を送りたい。自分たちがやってきたものを決して諦めなければ、訴えていけば、お客さんは必ずついてきてくれる。

 プロレスラーとしていろいろな人に支えられてきた。プロレスで得たものが俺のすべてだ。そしていまだに勉強中でもある。俺にとってプロレスとは人生そのものであり、生きるエネルギー。リングに上がれる幸せを忘れず、これからも戦っていきたい。  (終わり)