獣神サンダー・ライガーが気になる話題やプロレス観を語る「獣神激論」。今回のテーマは、23日付で新日本プロレスの新社長に就任した棚橋弘至(47)だ。アントニオ猪木、坂口征二、藤波辰爾に続く4人目の選手兼社長についてライガーの見解は――。

【ライガーが語る獣神激論(33)】棚橋選手が新日本プロレスの新社長に就任しました。いやー、ビックリしましたね。でも、考えてみれば棚橋選手はどん底にあえいでいた新日本プロレスを再浮上させてくれた立役者の一人。今ちょっと客足が落ちてるという状況で、新日本の機運をすべて引き上げるような期待を会社としても持ってるんじゃないかな。

 棚橋弘至という男はすごく正直で、うそをつかない。そこは人間的に素晴らしい。でも、僕もジュニアで他団体と交渉とかしてましたけど、そういう時って〝うそも方便〟というか、そういう部分もなきにしもあらずなんだよね。そこをどう立ち回れるのかなって思う。

 自分のことだけを考えてやってればいいというのが、これまでのプロレスラー人生だったと思う。今度は会社全体を引き上げなきゃいけない。社員も社員の家族のことも考えなきゃいけない。他団体との付き合いもある。それを現役で、どこまで同時にできるのか危惧してる部分はありますね。今の新日本の試合数を考えると、フルでこなしながらというのは当然難しいと思います。

 振り返ると、藤波さんの時がちょっと中途半端な状態になっていたかなというのがあるので、僕は試合数はある程度は絞った方がいいと思う。棚橋選手は頭がいいし、そこの部分は当然考えているんじゃないかな。今度の(来年1月4日)東京ドームでザック・セイバーJr.とのタイトルマッチに負けるようなことがあったら、シビアな線引きになることも考えられるよね。

 近年の新日本は、レスラーは経営に携わってこなかった。藤波さん以来19年半ぶりの選手兼社長ならではのメリットももちろんあると思うんですが、これも微妙なんですよね。WWEが成功したのは、ビンス・マクマホンのレスラーではないからこその柔軟なアイデアが成功したから。ミスターTとかシンディ・ローパーをリングに上げたりして、新しいファンを獲得していった。対照的に80年代に衰退していったNWAとかAWAは、みんなレスラーが指揮を執っていたんですよ。バーン・ガニアとかね。

 棚橋選手はレスラーならではの考え方ができるから、現場との風通しはもちろんよくなると期待できる。でも、今度は営業・事務方とのバランスもあるし、今のファンの気質にも合わせないといけない。戦いながら、そのかじ取りは想像以上に難しいと思うよ。棚橋選手が師匠と仰ぐ藤波さんでさえ、兼任では苦労を経験した。未来の新日本のビジョンも完成させる責任もある。いやあ、考えれば考えるほど、よく引き受けたと思うよ…偉い!

 もちろん成功するに越したことはない。棚橋選手にもすごく期待している。でも、今言っただけでもこれだけ問題があるわけだから、安直なことは言えないよね。あとはブレーンとしてどういう人たちが脇を固めるのか。そこだよね。じゃないと、棚橋選手だけが浮いて終わってしまうなんてことも考えられるから。

 脇を固めて、自分がリーダーシップを発揮できる環境を棚橋選手がつくれれば、団体は大きく好転すると思うよ。新日本プロレスというものを〝棚橋内閣〟がどう動かしていくのか、どう組閣していくのか。注目して見ていきたいよね。レスラー兼社長は絶っっ対に大変です。だからこそ頑張ってほしい。