全日本プロレス、秋の本場所「王道トーナメント(王道T)」は今年で10年目(2020年はコロナウイルス禍のため開催されず)を迎え、決勝戦(27日、名古屋)で新日本プロレスの小島聡が本田竜輝を撃破して優勝を決めた。

 初開催となった13年当時は、歴史ある春の祭典「チャンピオン・カーニバル」があったため、秋にトーナメントを開催するのはどうかという意見もあったが、一発勝負のトーナメントはリーグ戦とは違ったスリルに富んでおり現在では全日本マットで重要なシリーズとなっている。

 記念すべき第1回大会で優勝を果たしたのは元横綱曙だ。曙は05年に当時社長だった武藤敬司に弟子入りする格好で全日本に参戦。以降、全日本を中心にフリーとして各団体で暴れ回っていた。その後、13年9月1日に全日本に正式入団。プロレスデビューを果たして8年目で初めて団体の所属選手となった。

 実は6月に武藤らが退団して「W―1」旗揚げに向かったため、団体は危機に見舞われていた。曙は首脳陣の説得を受けて残留を決め、正式入団に至った。初開催が決まった王道トーナメントにかける意気込みが曙の背中を押したのか「分裂後の大変さは分かっている。やるしかない」と新生全日本の再建を誓った。

 そして9月11日後楽園で王道Tが開催。同年は武藤らの退団前に、ノアを退団した秋山準、潮崎豪、金丸義信、鈴木鼓太郎、青木篤志(故人)らが参戦しており秋山がカーニバルを制覇。メンバーには事欠かなかった。しかも1回戦では曙と秋山の豪華カードがいきなり実現した。

 曙は秋山の厳しい攻めに耐えながら、最後はまさかの新兵器「ヨコヅナインパクト」(ジャンピングパイルドライバー)で大逆転KO。殊勲の勝利を挙げた。その後もロウ・キー、バンビらを一蹴して決勝戦(23日、名古屋)に進出。元GHCヘビー級王者の潮崎と優勝をかけて激突した。

潮崎をヨコヅナインパクトでKOした曙。感涙の初Vだった
潮崎をヨコヅナインパクトでKOした曙。感涙の初Vだった

『壮絶なサバイバルレースを生き残ったのは全日本に入団したばかりの曙だった。曙は後頭部から出血し、ラリアートを食らって一時はKO寸前に。しかし潮崎のゴーフラッシャーを巨体で押しつぶすと、バックフリップから肉弾アタックを連打。重爆チョップも強烈な張り手で鎮圧し、最後は強烈なヨコヅナインパクトで突き刺して栄冠を勝ち取った。実は大きなハンディを背負っての出陣だった。曙は「キラーウェア」として「横浜大花火」(8月31日)でグレート・ニタ(大仁田厚)と対戦したが、その際に火炎攻撃で左半身に大やけどを負い、全治1か月の重傷を負っていたのだ。痛み止めを服用し、感染症に注意しながら激闘を乗り越えた』(抜粋)

 試合後にコスチュームを脱いだ曙の腹部は、目を覆いたくなるほど、やけどでただれており、誰もが絶句した。まさに元横綱の意地だけで王道Tを勝ち抜いた。

 優勝者として10月27日両国国技館で諏訪魔の3冠ヘビー級王座に挑むや、これまたヨコヅナインパクトで諏訪魔をKO。“故郷”である国技館で初のメジャータイトルを獲得して「そう簡単に巻けるベルトじゃないんだよね…」と感涙にむせんだ。この時期が曙のレスラーとしてのピークだったのではないか。

 しかし15年にはカーニバルを初制覇すると全日本を退団。新たに「王道」を旗揚げするも、17年に右脚蜂窩織炎と感染症を患い長期欠場に入り、現在も闘病生活が続く。今は一日も早い病床からの回復を祈るばかりだ。 (敬称略)