オリックスが「10・2」決戦を制し、1995年、96年以来の連覇を果たした。シーズン中盤から上位ににじり寄り、空前の混戦の中で最後までソフトバンクと一進一退のしのぎ合いを演じ、143試合目で劇的な逆転Vに成功した。エース山本、主砲の吉田正を投打の軸とし、中嶋監督の驚きの采配が冴えわたっての連覇。日替わりオーダーで日替わりヒーローを生み出した〝ナカジマジック〟の秘密を探った。
驚異的な粘りで逆転劇を演じた中嶋オリックスの強さはどこにあったのか。山本を始めとする先発、中継ぎ陣の獅子奮迅の働きに比べ、野手陣でさすがの数字を残したのは吉田正くらい。昨年の本塁打王の杉本の不調、助っ人外国人も期待外れに終わり、チーム本塁打数は133本から89本に激減するなどパンチ力を欠いた。
それでも勝負どころで選手が神がかった力を見せた。8月30日の楽天戦では9回に西村が今季初安打となる逆転の決勝二塁打を放ち、9月10日のソフトバンクとの首位攻防戦では、打率0割のルーキー渡部をスタメン起用すると、プロ初安打で2打点。終盤には8年目の西野がいぶし銀の巧打を連発させ、チームに勢いをつけた。
投手陣も8月28日の西武戦で先発の椋木がねん挫で登板を回避すると、昇格したばかりの山崎颯が緊急出動して3回を無失点。以降、山崎颯はリリーフの要となって無失点投球を続けた。また9月8日の西武戦で椋木が右ヒジ違和感で2回途中で降板した際も7投手による零封リレーで切り抜けた。主力以上に伏兵が何度もお立ち台に上がり、信じられないような粘りを発揮することでチーム関係者も「最初はまぐれだろうと思ったが、こういうことが何度も続く。やる方もやる方だけど、使う方も使う方。何かがあるんでしょう」とクビをかしげたほどだ。
選手の力量と可能性を把握し、何手も先を読む。球団ではデータ解析システムのトラックマン、ラプソードに加え、終盤からホークアイを導入し「もちろんデータをよく見てくれてるし、起用法に出ている。二軍選手の抜擢となれば一軍クラスの相手投手とのデータは少ないが、球筋に対しての打球方向で見ている。それは相手どうこうではなく、この投手のこのボールならこのタイプの選手で打てる、という判断になる」(チーム関係者)。実績のない若手でも特徴が相手と適合すれば勝負できる理由になるという。
現役時代は捕手として4球団を渡り歩き、日本ハム時代は指導者としてアメリカにも派遣された。フロント関係者は「勝負勘は経験値が大きい。日替わりオーダーは仰木さん(元監督)の影響が大きいでしょうし、練習漬けにさせず、中継ぎを2連投以上させないのはアメリカ流。プラス選手の二軍でのプレーも小林二軍監督とマメに連絡を取って把握している。あとは捕手目線の個人的な感覚。いつも持っているシステム手帳に秘密があるんでしょう」とマジック采配の謎解きをする。
また、選手の立場からは〝上位効果〟もあるという。「勝利も大事だけど、僕らは生き残りのために必死にやっている。それにチームが下位にいるより、上位にいる時に爪痕を残したいもの。そこの目の色を監督がよく見ていると思う。だから采配が的中しても僕らは不思議に思わない」(ある選手)。その〝がっつき感〟を見抜く眼力と実行力こそ指揮官のすごさだろう。
さらに危機管理も徹底していた。指揮官はシーズン当初からテレビ中継局に「サインを出す姿を撮らないでほしい」と異例の通達をし、万が一の情報漏れに備えた。「言われた時は驚きましたよ。今の時代はどんなビデオ分析をされるか分からない。中継側としたらやりにくさはありますが、そこまで徹底しているのがすごい」(テレビ局関係者)
選手を疲れさせないよう配慮し、やりくり算段でしのぎ切る。そんな姿にフロント内では「何十手も先を読む棋士のよう。それこそ球界の藤井聡太ですよ。AIにも勝つんじゃないか」との声まで出るほど。現有戦力で補強以上の〝補強〟をやってのけた中嶋監督。理想的な令和の知将に違いない。












