珍しく白星に恵まれなかった。パ首位のソフトバンクは8日のオリックス戦(京セラドーム大阪)で延長10回の末、2―3でサヨナラ負けを喫した。先発の前田悠伍投手(20)が7回1失点と好投しながら、8回に2番手のオスナが同点弾を浴び、24試合ぶりに失点。最後は10回から登板した杉山がサヨナラ打を許し、3連勝とはならなかった。

 この試合、小久保裕紀監督(54)は特別な思いでタクトを振っていた。「同点まではいかそうと。将来のために。止めにいくんじゃなくて、あの回は勝負させようと思った」。6回を終え、93球に達していた前田悠の続投を決断した。「(投げさせる)チャンスでもあった。シーズンを考えれば、常にいっぱいいっぱいの手を打っていたら優勝は難しい」。この日は8回を託す絶対的セットアッパーの松本裕がベンチ外。前田悠に長いイニングを任せる条件も整っていた。4試合連続となる「7イニング以上、自責1以下」の好投。自己最多108球で首脳陣の期待に応えた。

 その成長曲線には大物の予感が漂う。次回に持ち越しとなった開幕7連勝は、高卒3年目以内では2015年の大谷翔平(当時日本ハム)以来。09年には田中将大(当時楽天)も到達している。スター性を感じさせる〝負けない投球〟が、ひときわ目を引く。

 小学生のころから世代トップを走り続けた。大阪桐蔭高では選抜優勝投手となり、U18W杯では孤軍奮闘の活躍で日本に初の世界一をもたらした。勝ち運を引き寄せる希有な投手といえる。2年前のデビュー戦では3回6失点ながら、チームが11年ぶりの6点差逆転勝ちで黒星を消した。今季も5月の日本ハム戦で初回に満塁弾を浴びながら、チームは鮮やかに逆転勝ち。今季の得点援護率7・59も際立っている。

 なぜ、流れを呼び込めるのか――。王貞治球団会長(86)は「彼はとにかくマウンドで落ち着いている。それはやっぱり大きな試合や舞台を経験してきたから。そういう振る舞いが流れを呼び込む」と語る。世界の王も認める特別な男。白星こそ逃したが、快進撃はまだ続きそうだ。