ドジャース・大谷翔平投手(31)がメジャー移籍当初に経験した心温まるエピソードが、米専門チャンネル「MLBネットワーク」にゲスト出演した元エンゼルスGMのビリー・エプラー氏(50)によって明かされた。
同チャンネルの公式Xが10日(日本時間11日)に投稿したもので、大谷のメジャーでの活躍が未知数だった2018年当時の話。GMだったエプラー氏は大谷が二刀流デビューする前夜、大谷の両親と交わした会話を紹介した。
今でこそ誰もが知る存在となっているが、当時は決して順風満帆とは言えなかった。マイナーリーグ球団との実戦形式の試合やオープン戦で制球に苦しみ、世間では二刀流を疑問視する声が続出。その空気はコーチ陣やスタッフの間にも少なからず広がっていたという。そんな中、エプラー氏は「オオタニはメジャーに残す。もしうまくいかなければ、責任は私が取る」と明言。エンゼルスを選んでくれた大谷を、組織として守り抜く姿勢を貫いていた。
しかし、二刀流として先発投手デビューを迎える4月1日(同2日)の前夜。大谷の両親が滞在するホテルの部屋を訪れたエプラー氏は、意外な光景を目にした。
「部屋に入ると、ミセス・オオタニ(母=加代子さん)が少し緊張している様子だった。『明日の登板、楽しみですか?』と聞いたら『心配なんです。ボール1、ボール2になったらどうしようって』と言うんです。最初の打者を四球で出したら、その後どうなってしまうのかが不安だと」
日本ハムで結果を残したとはいえ、すべての環境が異なる異国の地で迎える息子のデビュー戦。子供を思う親の気持ちは大谷家でも同じだった。エプラー氏は「大丈夫です。心配しないでください。キャッチャーはマーティン・マルドナード。彼はストライクを盗めるいい捕手です。初球は速球になる。もしボールでも次はスライダー。すぐにカウントは五分になります。心配いりません」と精いっぱい励まして部屋を後にしたという。
だが、廊下に出た途端、ふと心臓の高鳴りに気づいた。
「これまでずっとショウヘイを見てきたお母さんが、あんなに心配している。それを見たら、急に自分も不安になってしまった」
急きょ、エプラー氏は当時スペシャル・アシスタントを務めていた元メジャーリーガーのエリック・チャベス氏に電話をかけ、気持ちを落ち着かせるために食事に誘った。
そして迎えたデビュー戦当日、エプラー氏は「一人では見ていられなくて、ビジターのロッカールームでエリックに隣に座ってもらい、モニター越しに試合を見ていた」そうだ。
母もエプラー氏も不安に駆られた中、当の大谷は初回を三者凡退。しかも2三振を奪う上々の立ち上がりを見せた。エプラー氏は立ち上がって部屋を出るチャベス氏から「ビリー、もう息をして大丈夫だよ!」と大声で言われ、ようやく落ち着きを取り戻した。
「ショウヘイは6回を投げ切り、その後の活躍は言うまでもない。だが、私はあの日のことは一生忘れない」
大谷がエンゼルスを選んだ理由の一つに、こうした球団首脳との信頼関係があったと言われる。今でこそ世界的なスター選手となったが、その裏側には陰で支え続けてくれた人たちの覚悟と情熱があったことを、改めて思い起こさせてくれるエピソードだった。












