【赤坂英一 赤ペン!!】巨人の「4番中田翔」に違和感を抱くファンはまだ少なくないらしい。中田は昨年日本ハムで暴力事件を起こし、引き取られるように移籍して以降、自ら具体的釈明をしていない。そんな選手を「常に紳士たれ」をモットーとする名門球団の第91代4番に据えるべきではないぞ、と。そうした声が上がっている一方「4番中田」が巨人の勝利に貢献しているのも事実だ。11日の広島戦でも、3回に試合を決定づける2ラン本塁打。今の巨人に、こんな仕事のできる勝負強い4番が他にいるだろうか。打撃だけでなく、一塁守備での貢献度も見逃せない。一塁線を破りそうな強烈な打球に飛びつき“回転レシーブ”で捕球したり、セカンドやショートからのワンバウンド送球を巧みにすくい上げたり。日本ハム時代にパ一塁手部門で4度ゴールデン・グラブ(GG)賞を受賞した技術が光る。

 そんな中田の一塁守備は、現役時代に史上最多の10度GG賞を受賞した駒田(現巨人三軍監督)をほうふつとさせる。駒田は191センチの身長を生かし、背を伸ばして頭上を抜けそうな打球や送球をキャッチ。片足をベースにつけたまま、人一倍柔らかな股関節を目一杯開き、ワンバウンド送球を拾い上げる名人芸でもチームを救った。

 1989年に川相(現巨人ファーム総監督)が正遊撃手に定着した要因のひとつも、そんな駒田の存在に負うところが大きい。当時は川相本人も「駒田さんは的が大きいから、微妙なタイミングでクソ握りしかできない状況でも『えいや』って投げられるんです」と証言。こうしてショートとして球団史上最多となる6度GG賞を受賞する名選手へ成長したのである。

 中田はもともと、日本ハムで“内野手失格”のらく印を押されていた。生まれつき体が硬く、股割りができないために、コーチに足元へ手で転がされたボールも拾えなかった。時折「自分では今でもうまいとは思っていない」と話している。

 それでも、連日練習を重ねてハンドリングを磨き、駒田のように悪送球をカバーできるほどの名一塁手に脱皮。今のセカンド、吉川が思い切って送球できるのも、中田のおかげと言っていい。

 先日、長嶋さん(巨人終身名誉監督)が都内の病院に入院したときは、中田を直接指導する姿が何度もメディアで報じられた。そういうチームにいる以上、中田は地道に、攻守両面で勝利に貢献していくしかない。たとえ賛否両論あろうともだ。

 ☆あかさか・えいいち 1963年、広島県出身。法政大卒。日本文藝家協会会員。最近、Yahoo!ニュース公式コメンテーターに就任。「最後のクジラ 大洋ホエールズ・田代富雄の野球人生」「プロ野球二軍監督」(講談社)など著作が電子書籍で発売中。「失われた甲子園」(同)が第15回新潮ドキュメント賞ノミネート。他に「すごい!広島カープ」「2番打者論」(PHP研究所)など。