【コロナ危機を乗り越える プロ野球界にまつわる店の現状(7)】野球指導と治療が可能なハイブリッド。元阪神の左腕・三東洋さん(41)は神戸で「日常鍼灸整骨院」を開業し6年目になる。患者とじかに接する仕事とあって、コロナ禍の影響は甚大だった。だが、ピンチをチャンスに変えるべく前を向いて進んでいる。

「4月、5月には収入が8割減という状況でした。6月から徐々に患者さんは戻ってくれましたが、こういう状況が半年とか続くとヤバいなと感じていました」。そう話すように不安はあった。だが、けがに苦しんだ現役時代に育んだ強い心でコロナに負けるつもりはなかった。

 三東さんは島根・益田東高から駒大、ヤマハを経て2002年ドラフト6位で阪神に入団。2年目に初先発初勝利を挙げるなど、5勝無敗の成績を残した。だが、その後は左肩の故障のため未勝利。当時の岡田彰布監督に期待されながら、07年オフに短い現役生活を終えた。

 そこから紆余曲折を経て15年に現在の治療院を開業。ジャズの音色が聞こえてきそうな神戸・三宮の北野エリアに拠点を置いた。当初から元野球選手であったことは前面に出さなかった。そういうこともあり「地域の高齢者の方々や近隣の飲食店の皆さんに支えてもらってます」と、地元の整骨院として地道に定着していった。

 そんな折にこのコロナ禍。しかし、三東さんは悲観的にはならなかった。現在、学生野球資格を回復しており高校、大学での野球指導も可能。野球好きな患者には元プロであることも明かしている。「将来、自分が指導し、治療した子供の中から(プロが)出てきたらいいなと思います。いつか、そんな連絡をもらったりする日が来るなら本当にうれしいと思います」と夢を膨らませる。

 さらには、東南アジアなど野球の発展途上国にも目を向ける。「野球が盛んでない海外での指導もいいかなと思ってます。技術もですが、治療という面ではまだまだだと思いますしね」。自身が苦しんだ故障を、世界の子供のために防いでみせる。そんな未来も視野に入れている。

 現在は海外渡航もままならない状況。それでも、世の中が通常モードとなる日を待って準備を続ける。人類がコロナに打ち勝つ時、三東さんの夢も動きだす。