V字復活だ。スキージャンプ女子の高梨沙羅(25=クラレ)がW杯個人第17戦(日本時間7日、オスロ)大会で優勝。今季3勝目、通算63度目の優勝を飾った。北京五輪後のW杯で好成績を収めている高梨。五輪ではメダルに届かず、混合団体では自身のスーツ規定違反が判明して失格となった。精神面の影響を心配する声が上がっていた中、大会後の最初の試合で優勝を飾るなど本来の実力を発揮。そのヒロインが〝負の連鎖〟を断ち切ったきっかけとは――。


 再び世界の舞台に戻ってきた高梨が「北京の悲劇」を感じさせない活躍を見せている。五輪後の最初の実戦となった2日のW杯個人第14戦(リレハンメル)を制して今季2勝目を挙げると、5日の第16戦(オスロ)では3位に入って通算112回目の表彰台に立つなど好調を維持。この日の第17戦では1本目に130.0メートルの大ジャンプでトップに立つ。さらに2本目も128.0メートルでトップを守り、歓喜の今季3勝目を挙げた。笑顔の高梨は「今日はほぼ風もなくて、飛びやすかった。自分のテクニックに集中できた」と十分すぎる手応えを語った。

 ただ、再スタートを切るまでは険しい道のりだった。4年に一度の大舞台は苦い記憶として刻まれた。頂点を狙った個人ノーマルヒルはメダルにすら届かず4位。気持ちを切り替えて臨んだ混合団体は自身のスーツ規定違反による失格が判明し、こちらも4位に終わった。混合団体では自身を含む5人が失格したとはいえ、金メダルの期待もあったことから自責の念を感じて涙を流した。

 その後は自身のインスタグラムに長文の〝謝罪文〟を掲載。また、W杯メンバーに選ばれながらも当初は「今後の出場は未定」とアナウンスされるなど、高梨の精神面を心配する声も少なくなかった。そうした状況から復帰が決まり、高梨に近い関係者も「安堵しています」と胸をなでおろしていたほどだ。

 では、もう一度ジャンプに向き合うことができたきっかけは何だったのか。その一つが、信頼の置けるスタッフの存在だ。中でも全日本チームのコーチ経験があり、現在は高梨の個人コーチを務めるオーストリア出身のツイッター・ヤンコ氏が果たしている役割は大きい。

 高梨が「小学6年か中学1年ぐらいからの付き合い」と話すように、2人の師弟関係は10年以上にも及ぶ。関係者によると、ヤンコ氏は以前は国内大会にも同行していたが、新型コロナウイルス禍の現在は海外遠征の際に指導。五輪後に再び高梨と合流したという。

 そのヤンコ氏について、高梨はこう打ち明けていた。「とにかくいいイメージがわくまで練習に付き合ってくれますし、彼はあまり選手のことを否定しないんです。私がやりたいと思ったことに対して『じゃあ、このようにやっていこう』とか、いろんなアイデアをくれるので、そのへんは助かっていますね」。長年の信頼関係はもちろんのこと、困ったときに手を差し伸べてくれるスタイルが復調を後押ししたはずだ。

 周囲のアシストもあり、短期間で〝負の連鎖〟を断ち切った高梨。残された試合を戦いながら、新たな目標を模索していく。