何事も免疫は必要ということか――。阪神では9日の広島戦からオープン戦5試合を本拠地の甲子園球場で行うが、その間に大観衆が戻ってきたときのことを想定した練習を実行するという。なんでも試合前のシートノックを完全無音の〝サイレント〟状態で行い、味方の声が聞こえず「自分で判断するしかない」状況下でのプレーを磨くのが目的だそうだ。

 筒井外野守備コーチは大マジメに意図を語る。「『サイレント』には逆の意味もあるんです。大観衆で(指示が)聞こえにくい、聞こえないときに、どういう動きができるか? うちは元気があるので基本、声の指示とかリアクションは多いけど、周りの指示がなかったり、聞こえなくても大丈夫か? その確認」

 今年は全球団が無観客キャンプという例年とは異なる状況だったが、静寂に慣れきってしまった選手に〝本来の緊張感〟を思い起こさせる狙いもあるという。

 実は今キャンプでも試験的に取り入れ、実戦と同じゲームノックの形式で前半15分を無音、後半15分を指示などの「声OK」で行った。これは選手にも「声が聞こえない中で『どう動くか?』という判断力も試されましたし、周囲の声のありがたみも分かりました」と大好評だった。

 9日からのオープン戦5試合については政府及び、兵庫県のイベント開催要項を鑑み、1万人を上限として開催する見込みだが、そもそも甲子園球場の収容人員は12球団のフランチャイズ球場ではトップの約4万7500人。熱狂的な応援でベンチからの指示や選手間のコミュニケーションがかき消されることも当たり前にある。だからこそ〝無音〟に慣れておくことも大事というわけ。

 今季は売り出し中の佐藤輝明(21=近大)や中野拓夢(24=三菱自動車岡崎)など、ルーキーたちも数多く開幕一軍争い展開している。「サイレントノック」は新型コロナ禍においても甲子園の〝魔物〟と向き合う絶好の機会となりそうだ。