楽天に8年ぶりに復帰した田中将大投手(32)が、6日から沖縄・金武町で行われているチームのキャンプに合流。早速その存在感の大きさを思い知らせている。7日にはブルペン入りするなど自身の調整もさることながら、チームメートら周囲に与える波及効果がとにかく絶大。合流2日目にして「田中塾」に志願者殺到の予感が漂うなど、チームの空気が一変している。

 田中将は7日にチーム合流後初となるブルペン投球を披露。真新しい背番号18のユニホームをまとった右腕は、正捕手候補の太田光(24)を相手に直球、変化球を交えながら立たせて12球、座らせて40球の計52球を投げ込んだ。

「現状、自分が思っているより投げられたので良かったと思います。(変化球の)動きもそうですし。思っている以上に投げられたのでそれは確実にプラス材料かなと思います」

 順調な仕上がりを自らアピールするなど、終始ご機嫌な様子だったが、ナインが驚愕したのは圧巻のブルペン投球だけではない。この日から本格的にスタートした直伝の「個別指導」だ。

 チーム合流初日のあいさつで「7年間アメリカで野球をやってきて、いろいろと経験してきたこともある。何か僕が答えられることがあれば伝えていきたいと思いますので、気軽に、気軽に聞いてください」とナインに呼びかけていた田中将。しかし、日米をまたにかけた“世界の右腕”だけに、いくら本人が「気軽に…」と言っても若手側からの声掛けはなかなか容易ではない。

 だが、勇気を持って接触を試みた選手には想像以上の収穫がある。その一端を明かしたのが昨季序盤、チームの守護神を務めた森原康平(29)。7日に自ら「スプリットの握り」を聞くため田中将のもとに歩み寄ったところ、本人から丁寧に指導してもらったという。

「ものすごく勉強になりました。(球の)持ち方もあるんですけど、どういうイメージで投げているかを聞いたんです。それがすごく分かりやすく、説明も優しくて(笑い)」

 森原はこれまでスプリットを投じる際、ボールの縫い目を外して投げていた。だが、田中将は「あえて人差し指と親指を縫い目に掛けて投げている」と惜しみなく握り方を伝授してくれたという。

「その握りで投げたことはなかったので。そうなんだ、と。しかも『個々で合うか合わないか分からないから自分の感覚で』と言っていただいて。本当にありがたいです」(森原)

 同様に、プロ3年目で今季飛躍が期待されている引地秀一郎(20)も、小山コーチを介して田中将からスプリットの握りを指導してもらい「すごかったです」と感激。「これからどんどん投げてみてまた聞いてみたい。(教え方も)優しかったです」と、目を輝かせた。その効果はやはり、絶大なようだ。

 そんなナインの反応を知ってか知らぬか、田中将は自らの助言について「チームにとってプラスになることだったらどんどん伝えていきたい。でも、自分から押しつけるようなことはしたくない。聞いてくれれば、なんでも答えるって感じですね」と涼しい顔だが…。

 想像以上に懇切丁寧なことが判明した田中塾。「聞かぬは損」となりそうなだけに、今後は「おれもおれも」と入塾生が殺到するのは間違いなさそうだ。