【コロナ危機を乗り越える プロ野球界にまつわる飲食店の現状(3)】ドラゴンズ愛は永遠なり――。1980年代に中日で外野手、代打として活躍したOBの豊田誠佑氏(64)は昨年1月末にナゴヤ球場から徒歩約8分、名古屋市中川区の名鉄山王駅近くで居酒屋「おちょうしもん」をオープン。新型コロナウイルスの影響で3月30日から休業していたが、緊急事態宣言の解除を受けて営業を再開した。

 78年にドラフト外で入団し、88年に引退後はコーチやスカウトを務め、2009年から14年までナゴヤ球場に隣接する合宿所「昇竜館」の館長として若手選手と寝食を共にしてきた。出店に当たっては場所にもこだわったという。

「現役時代や館長として長く過ごしてきたナゴヤ球場の近くにどうしても店を出したかった。店名は、水戸黄門のうっかり八兵衛がお調子もんなところからひらめいてつけた。野球一筋から初めて店を出して、お客さんに何か粗相があっても『お調子もんなんで』と言えば笑って許してもらえる(笑い)」

 料理はスタッフの横田裕希さんに任せている。隠し味に赤みそを使ったタレでいただくクジラのユッケや、バラ肉を使ったとても軟らかい串カツなどが大評判だ。店には館長時代に寮生だった又吉や福谷ら現役選手をはじめ、球団幹部やスカウト、裏方さんら関係者も多く訪れる。

 やはり選手のことは気になる。手のかかった選手ほど思い入れがあるようで、今や主将を務め、昨季は8年目にして初めてゴールデン・グラブ賞とベストナインに輝いた高橋周平内野手(26)のことを「入寮してきたときは掃除ができずに部屋やロッカーは汚かった。朝も寝坊して内線電話でよく起こしたり、結構怒ってきたけど、スーパースターになっちゃったね」とうれしそうに話す。

 古巣と同様、豊田氏にとってもこれからが勝負だ。「コロナの前は予約しないと入れない店としてお客さんがいっぱい来てくれたが、自粛していた約1か月半は当然売り上げゼロだった。またお客さんが戻ってきてくれたらうれしい」。無観客からスタートするプロ野球より一足先に、にぎわいを取り戻す。