エンゼルス番として10年目を迎えたオレンジカウンティー・レジスター紙のジェフ・フレッチャー記者が大谷翔平投手(27)を徹底的に掘り下げた自身初の著書を7月に出版することが分かった。密着本の執筆に至るまでの経緯、今季への期待、そして取材の過程であらためて気付いた“エイリアン”大谷の本質と元祖二刀流ベーブ・ルースとの決定的な違いなどを明かしてもらった。

「当初、大谷がルーキーだった2018年に本を出す予定だったんだけど、彼がケガした時に出版社がキャンセルにしたんだ。19、20年はそのまま過ぎ、21年シーズン終了後3週間くらいしてからかな? 以前ピッチ(短時間のプレゼンテーション)をかけた別の出版社からオファーをもらい、このオフ2か月で書き上げた」

 フレッチャー氏にとって初の自著。日本時代の大谷について徹底的に調べ上げ、現在に至るまで大谷について語り尽くしているという。

「大谷のストーリーは本当に素晴らしい話だから、誰かが書くべきだと思ったんだけど、米国の記者で(エンゼルス入団から)ずっと追ってきたのは自分だけ。だったら自分が書くべきだと。本の執筆は初めてでどうなるか見当もつかなかったけど、案外スムーズだった。何せ彼が4年前にエンゼルスを選んだ時から毎日のように書いてきた話だからね。とてもいい経験になったよ」

 フレッチャー氏は大谷のMLBルーキーイヤーから4年間にわたって密着取材。日数に換算すれば、実に1460日だ。今回、大谷の球歴をさかのぼる中で新たな発見がたくさんあった。

「日本時代の彼がどんな人で、どんなご両親の元、どんな環境で育ったか、どんな選択をして今に至るかなどあらためて学んだけど、それに加えて大谷以外の選手について学べたのが興味深かった」

 その中であらためて気付かされたのは元祖二刀流ベーブ・ルースとの決定的な違いだ。

「皆、ベーブ・ルースは二刀流だったって話をするけど、大谷とベーブ・ルースでは全く違う。ベーブ・ルースは二刀流にはなりたくなかったんだ。投手から打者に移行していった二刀流なんだ。対して大谷は二刀流になりたくて、それを目標にずっと頑張ってきた。またニグロ・リーグの二刀流選手についてもたくさん学んだ。大谷の存在が、人々に彼らの存在を知るいい機会を与えてくれたと思う」

 ルースはレッドソックスに1914年に入団し、15~17年まで投手がメイン。18、19年は投打の二刀流だったが、登板数は17年の41試合から18年は20試合に半減。20年のヤンキース移籍後は打者に専念した。35年に引退するまで登板はわずか5試合(先発4試合)だった。

「知れば知るほど、大谷は野球一筋な男だね。『野球少年』って言うんだっけ。まさに野球だけにフォーカスしているからできることなんだなって。全ての規制を外した時に彼の才能が爆発して、フィールドでの彼が2020年までよりずっとうれしそうなのも印象的だったね」

 二刀流に挑戦する選手らにもインタビューしている。

「二刀流の未来について聞いたんだ。大谷が二刀流トレンドをつくり出すと思うか?と。答えは『NO』。大谷はユニークすぎる。彼だからできたのであって、他にできる人はいないという結論だったよ」と笑いながら明かした。

 全米で話題になるのは間違いないが、日本での展開も期待している。

「日本での出版はまだ決まっていないのだけど、できたらいいなと思っている。日本メディアによく大谷についての米国側の見解を聞かれるのだけど、この本にはそれが詰まっていると思うから、きっと日本の大谷本と比べても面白いと思う」

 最後に、今季の大谷についての見解を聞いた。

「2020年までは誰もが二刀流は無理だと言っていたのが、大谷が2021年にできたから今度はいつでもできると思い始めている。でも、本当に難しいことだと思うんだ。毎年、すごい成績が残せなくても評価を変えるのではなく、彼がやったことを味わい感謝すべきだと思う。同じことができる保証はなく、むしろケガなどが起こる可能性の方が高いのだから。でも、やってほしいと思う。いろんな意味で楽しみだよね」

 今季も大谷の一投一打は歴史に刻まれる。その全てが決定的瞬間となるだろう。見逃し厳禁だ。


<序文はマドン監督>フレッチャー氏の大谷本のタイトル「Sho―Time:TheInsideStoryofShoheiOhtaniandTheGreatestBaseball SeasonEverPlayed(大谷翔平についてのインサイドストーリーと野球史上最高のシーズン)」。米アマゾンで大谷をテーマにした本を3種類確認できるが、本格的な内容は本書が初。序文はエンゼルスのマドン監督。7月12日(日本時間13日)に全米で発売予定。256ページで価格は27ドル99セント(約3200円)。米アマゾンなどで予約受け付け中だ。


 ☆ジェフ・フレッチャー ロサンゼルス・タイムズ紙などを経て、1997年にサンタローザ・デモクラッツ紙で野球記者としてのキャリアを開始。その後、AOLファンハウス、ディアボロ・カスタム・パブリシングで経験を重ね、2012年9月にオレンジカウンティー・レジスター紙へ。13年からエンゼルス番記者を務める。大谷を18年の入団1年目から取材。今季で10年目は現在の番記者では最長。