高校野球秋季東京都大会の決勝が10日に神宮球場で行われ、帝京は0―6で国士舘に敗れ準優勝。10年ぶりの出場を目指した来春センバツは“当確”とならず、明治神宮大会の結果や関東代表との兼ね合いで出場が決まる状況となった。

「ここ一番で打てなかった。勝ちきれないところは勝ちきれないが、勝つ能力はあった。勝たせてあげたかった」と前田監督。国士舘の好投手、中西(2年)に2安打完封負けを喫し、2011年夏以来9年ぶりの甲子園は遠のいた。それでも久々に決勝まで進んだ名門校復活の陰には、前田監督もほれ込む“鬼主将”の存在がある。

 新チームをまとめ上げるのが大阪出身の加田拓哉主将(2年)。中学時代には前田監督自ら所属ボーイズに足しげく通い、帝京進学を決めた。入学直後、加田が練習で感じたのは名門らしからぬ「ぬるさ」だという。

「練習でミスをしても『ドンマイ、ドンマイ』という感じで、なれ合いのような緩さがあった。僕がいた大阪のボーイズではありえない雰囲気。ミスをしたら全員できついことを言い合って、練習から緊張感を持たせるようにしました」(加田)

 当初は先輩やレギュラーには強く言えない選手が大半だったが、加田がたびたび言い聞かせたことで徐々に練習で厳しい声が飛び交うように。時代が変わりかつてのスパルタ指導が立ち行かず、指導を改めるも今度は緊張感が維持できない。長らく低迷していた帝京に、ようやく選手自ら律し合う自主性と健全な競争意識が芽生えた。

 ある選手は「入学前はユーチューブで“鬼の前田”とか見ていて、ビクビクして入ったけど、そこまで怒られることはなかった。今は自主性がチームのテーマ。選手同士で言い合ってるときは監督は何も言ってこないので、監督を怒らせないためにも自分たちで厳しくやっています」と本音を語る。

「キャプテンがしっかりまとめてましたから。そういう点では私自身も手応えは感じていた」と事あるごとに加田を称賛した前田監督。かつての鬼監督も認める“鬼キャプテン”が、名門完全復活のカギを握る。