虎にも〝大艦巨砲主義〟を放棄せざるを得ない時が来たのか――。藤川監督率いる阪神は現在、高知・安芸で秋季キャンプの真っただ中。若手主体のメンバーで来季へ向けた鍛錬と戦力の見極めを進めている。

 指揮官就任当初は地元・高知のファンへのサービスも兼ね、紅白戦などの実戦メニューを積極的に取り入れていたが、今秋は見送る方針。一方で力を入れているのが、ケース打撃などを通じた地道な作戦練習だ。

 同メニューを主導するのは、今秋に二軍から配置転換された野村作戦統括コーチだ。チームは第1クールから得点パターンの選択肢を増やすべく、バスター、エンドラン、2ランスクイズなど小技の習熟に力点を置いた練習メニューを消化中。新設ポストを担う野村コーチも「点の取り方のバリエーションを増やしたい」と使命感をにじませる。

 危機感はチーム全体で共有している。主砲・佐藤輝明内野手(27)のメジャー挑戦を球団が容認したことが大きい。近本、中野、森下、佐藤、大山と充実したラインアップをここ数年、上位に固定して戦ってきた阪神は、本拠地・甲子園の広さをものともしない攻撃力を武器に直近4年間で3度のセ・リーグ制覇を達成。だが、打線の中核を担う佐藤が抜ければ、攻撃スタイルの転換は避けられない。

 球団OBは「佐藤の退団によって失われるのは40近い本塁打や100前後の打点だけではない。彼が軸として打線の中心にいたからこそ、前後の打者たちのマークも緩んでいた。主力5人による相乗効果こそが今までの打線の強さの本質だった」と語る。これまでは良くも悪くも〝選手任せ〟で得点できていたが「来季以降はベンチ主導で点を取りに行かなければ苦しい」(同OB)という。

 これまでもたびたび「攻撃に策が少ない」「主力打者の状態次第」と指摘されてきた藤川阪神にとって「脱サトテル依存」は今秋の最重要テーマだ。黄金時代の曲がり角が見え始めた今、無駄にできる時間はどこにもない。