ドジャースの〝札束攻勢〟に、見えない天井が迫っている。大リーグの労使交渉は12月1日(日本時間2日)の現行協定失効を前に暗礁に乗り上げ、ロックアウト突入が現実味を帯びてきた。だが、常勝球団にとって本当の恐怖は、球界の機能が止まることだけではない。争点の先送りが、数年先まで補強の足かせになりかねないのだ。

 米大リーグ機構(MLB)は3日(同4日)、新労使協定に向けてサラリーキャップ(年俸総額の上限)と最低支出額の導入を2028年まで延期する案を提示した。上限は2億5820万ドル(約409億円)、下限は1億8020万ドル(約285億円)。オーナー側は戦力均衡を掲げて導入を求めるが、選手会は年俸抑制につながるとして猛反発。実施を1年遅らせても対立の火種は消えず、12月1日の決裂を警戒する声は強い。

 米ドジャース専門サイト「ドジャース・ウェイ」は5日(日本時間6日)、今回の提案が球団に及ぼす深刻な影響を指摘した。2027年の年俸総額は約4億5000万ドル(約713億円)に達する見通しという。仮に提案通りの上限が28年に適用され、この規模が続けば、単純計算で約300億円分もの圧縮が必要になる。大谷翔平投手や山本由伸投手らを抱える豪華戦力を、そのまま維持できる保証はなくなる。

 球団はすでに警戒を強めている。米「カリフォルニア・ポスト」のジャック・ハリス記者によれば、制度導入までの猶予を見越した契約戦略が、今年1月にカイル・タッカー外野手と結んだ4年総額2億4000万ドル(約380億円)の契約にも表れているという。超大型の長期契約を避け、柔軟性を残そうというわけだ。

 補強したいのに、将来の人件費削減も考えなければならない。その象徴が今オフFAとなった左腕タリク・スクバル投手だ。獲得に成功しても高額年俸で総額は一段と膨張。28年を見据えて主力の契約を選別し、トレードで整理する事態も想定される。

 実際の制度導入は未決定だが、結論が出ないこと自体が補強を萎縮させる。資金力を武器にしてきたドジャースにとって、今度の敵は他球団ではなく、先の読めない〝財布のルール〟なのかもしれない。