メジャーリーグの〝財布のひも〟は、引退した審判員にまで固く結ばれていたのか。ロックアウト危機を前に選手会と激しい綱引きを続けるMLBが、今度は球界を支えた功労者たちから年金の過少支給を理由に訴えられた。米全国紙「USAトゥデー」のボブ・ナイチンゲール記者が5日(日本時間6日)、報じた。

 訴えを起こしたのは、歴代最多のレギュラーシーズン5460試合を裁いたジョー・ウェスト元審判員(74)ら5人。残る4人はゲリー・デイビス、トム・ハリオン、ラリー・ヴァノバー、ジェリー・レインの各氏だ。全員が25年以上の勤務歴を持ち、65歳を超えて引退。5人で延べ179シーズン、計2万1063試合を裁いた。

 9月29日(同30日)にニューヨーク南部地区連邦地裁へ提出した44ページの訴状では、年金の計算方法や運用に問題があり、受け取るべき金額を大きく下回ったと主張。5人の損失は合計約200万ドル(約3億1700万円)に達する可能性があるという。年金の受給開始が通常の退職年齢より遅くなっても、本来必要な増額措置が適用されなかったほか、62歳以降の有利な給付条件を隠し、早期引退を促していた疑いも訴えている。

 それだけではない。審判員側を代理するポール・ホームズ弁護士によれば、同様の問題を抱える引退審判員は少なくとも24人。2021年11月から苦情を申し立てたものの、救済に至らず、MLB幹部から「気に入らないなら訴えてみろ」と告げられたという。同弁護士は計算ミスの反復を問題視し、意図的な過少支給だったと批判。同弁護士によれば、MLB側は誤りを認めて一部返還を提案したものの、金額が不十分として拒否されたという。MLBは係争中を理由にコメントを控えている。

 折しもMLBと選手会は、12月1日(同2日)に期限を迎える労使協定の改定交渉で対立。MLB側が導入を目指すサラリーキャップ制に選手会が猛反発し、ロックアウト突入の懸念が高まっている。年金訴訟は選手会との交渉とは別問題で、訴えの正当性も法廷で争われる。それでも長年グラウンドを守った元審判員にまで〝出し渋り〟をしたとの印象が広がれば、MLBにとっては痛手だ。巨額マネーを動かす球界の盟主が「せこい」と見られるようでは、労使対立のさなかに自らイメージを損ないかねない。