「失敗を恐れない」――。ドジャースが今夏獲得した2年連続サイ・ヤング賞左腕の原点には、今も脳裏に焼き付く「満塁弾の悪夢」がある。米地元紙「カリフォルニア・ポスト」は21日(日本時間22日)、タリク・スクバル投手(29)が抱く〝投球哲学〟を特集した。今夏にタイガースから移籍後、ドジャースでは3試合に先発したが、本人は「満足のいくものではない」と厳しく自己評価。それでも重圧にのみ込まれないのは、2年前の屈辱があるからだという。
2024年10月12日(同13日)、敵地プログレッシブ・フィールドで行われたガーディアンズとのア・リーグ地区シリーズ第5戦。勝てばリーグ優勝決定シリーズ進出という大一番で、5回に1―0から死球で同点とされ、続く打者にシンカーを左中間席へ運ばれる満塁本塁打を浴びた。チームは敗退。スクバルは「2、3日間、ずっとそのことを考えていた」と振り返るほど打ちのめされた。
だが、そこから逃げなかった。投球内容を見返し、自分が勝負から退かなかった事実を再確認。6回も続投して三者凡退に抑え、「あの日の自分の戦いぶりを誇りに思う」と受け止め直した。その後は翌年も2年連続でサイ・ヤング賞に輝き、失敗を成長の燃料へ変えた。「失敗は必ず起こる。それが人生だ。失敗や逆境から多くの成長が得られる。だから私は失敗を恐れていない」と言い切る。
その精神を体現する存在として、今のチームメートを挙げた。山本由伸投手(28)だ。昨年のワールドシリーズで第6戦に先発した翌日も第7戦のマウンドに上がった姿を振り返り、「もし失敗しても誰も気にしなかっただろう。持てる力のすべてを出し切ったからだ」と称賛。「これまで見た中で、最もクレイジーなポストシーズンのパフォーマンスの一つ」とまで表現した。
ロサンゼルスという巨大市場、世界一を求められる名門で投げる環境は、スクバルにとって新たな重圧でもある。それでもロバーツ監督は、左腕の集中力や謙虚さ、体のケア、チームメートとしての姿勢を高く評価し、「彼は積極的に行動する人だ」と見ている。
自らの傷痕と、山本が示した覚悟。スクバルが求めているのは無傷のエース像ではない。失敗すら引き受け、次の一球へ踏み出す強さだ。満塁弾に沈んだ夜は、いまやドジャースで頂点を目指す左腕の「糧」へと姿を変えている。












