火消しのはずの言葉が、くすぶる火種を逆に照らし出した。米サンフランシスコの地元ラジオ局「KNBR」は23日(日本時間24日)、ジャイアンツのラファエル・デバース内野手(29)が、21日(同22日)の敵地マーリンズ戦で引き起こした〝代走拒否騒動〟について「誤解だった」と説明したことを伝えた。

 問題の場面は1―2で迎えた9回無死だった。デバースは四球で出塁し、同点の走者として一塁へ。ビテロ監督はここで俊足の新人ジョナ・コックス外野手(24)を代走に送った。ところがデバースはベンチへ向かって指を振り、交代を拒むようなしぐさを見せた。コックスが一塁付近まで来てもなおグラウンドを離れず、最終的には不満げな表情でベンチへ戻った。

 地元局が伝えた本人の言い分は、やや苦しいものだった。デバースは通訳を介し、2日前にハムストリングの不安を監督に伝えていたため、それが交代理由だと思ったと釈明。「誤解だった」と強調し、試合後にはビテロ監督へ謝罪したことも明かした。ただ「少し大げさに騒がれた」とも口にし、受け止め方によっては火消しどころか、騒動の受け止めに対する不満を重ねた格好でもある。

 ただ、釈明直後の一戦ではひとまずバットで答えた。23日(同24日)の本拠地アスレチックス戦では、7回に中前適時打を放ち、3―1の勝利に貢献した。火消しの言葉だけでなく結果も添えた格好だが、それでもチームは32勝46敗と大きく負け越し。ひと振りで騒動の余波まで完全に消せる状況ではない。

 実際、デバースの問題行動の引き金となった21日のマーリンズ戦におけるベンチの判断自体は理にかなっていた。1点を追う9回、少しでも同点の可能性を高めるために足のある走者を起用するのは自然な一手だ。実際、コックスは今季マイナーで盗塁を量産してきたスピード型。対するデバースは中軸を担う大砲で、走力で局面を変えるタイプではない。結果的に後続が倒れて試合はそのまま2―1で敗れたが、勝敗以上に残ったのは「主力が監督の采配に公然と異を唱えた」という重い絵面だった。

 チームが沈む中で、監督の求心力やクラブハウスの空気に疑念が向けられるのは避けられない。デバース自身も今季は打率2割3分8厘、11本塁打、36打点、97三振。3度の球宴選出を誇る看板打者としては物足りず、発言の説得力を成績で支えられていない。

 謝罪はした。だが、地元メディアを通じた「誤解だった」との説明が、周囲にどこまで届くかは別問題だ。今のデバースに必要なのは言葉ではなく、沈むチームを引き上げる一打。バットで黙らせられなければ、この騒動は単なる一幕では済まなくなる。