〝お払い箱〟にされた男が、今や「イチロー級」の安打製造機としてメジャーをザワつかせている。

 米老舗誌「スポーツ・イラストレイテッド」の電子版「ON SI」は23日(日本時間同日)、マーリンズのオットー・ロペス内野手(27)が打撃開眼を遂げた背景を、記事内でクローズアップ。22日(日本時間23日)のレンジャーズ戦でチームは本拠地ローンデポ・パークで3―4と敗れたが、ロペスは3打数2安打。今季成績を打率3割3分6厘、103安打、5本塁打、33打点、16盗塁とし、打率と安打数でナ・リーグどころかメジャー全体トップに立っている。

 2年前を思えば、まさに別人だ。ロペスは2024年2月にブルージェイズからジャイアンツへ移ったが、同年4月1日(同2日)に事実上の戦力外となり、同4日(同5日)にマーリンズがウエーバーで獲得した。ジャイアンツ在籍は約1か月半。メジャーで出場機会を得る前に放出された選手が、いまや首位打者候補に化けたのだから、古巣にとっては痛恨の見落としと言うほかない。

 転機はオフの打撃改造だった。ON SIによれば、ロペスはマーリンズのペドロ・ゲレーロ打撃コーチとともに構えを見直し、より深く沈み込んだ姿勢から前足へ体重を乗せ、下半身を使ってボールを強くとらえる形へ変えた。結果としてバットスピードが上がり、打点はホームベースの前へ移動。平均打球速度もキャリア最高水準となり、これまで凡打になっていたゴロが内野を抜ける安打に変わり始めたという。

 数字にも変化は出ている。速球への打率は22~25年の2割6分6厘から今季は3割8分8厘、同長打率は3割9分から5割6分へ急上昇。平均打球速度も88・3マイル(約142キロ)から90・1マイル(約145キロ)に上がった。単なる好調ではなく、技術の裏付けを伴った覚醒だ。

 そこで浮上しているのが、イチロー氏(52=マリナーズ会長付特別補佐)の現役時代との比較だ。2004年にメジャー記録の262安打を放った稀代のヒットメーカーと同列に語られるのは、それだけロペスの安打ペースが異様だからだ。強打者全盛の時代に「打って走って、次々と安打を積み上げる」古典的なヒットマンが再評価されている意味は大きい。

 スター不在と見られがちなマーリンズで、ロペスは一躍、球宴級の存在感を放つまでになった。1か月余りで見切られた男が、イチロー氏の名を引き合いに出されるまでになった逆転劇。かつてイチロー氏も15年から17年まで在籍したマーリンズで〝フロリダの安打製造機〟と称されているロペスには、まだメジャーを驚かせる余地を残している。