放出候補のはずだった男が、高額契約ゆえにボストンに残る――。レッドソックス・吉田正尚外野手(32)を巡る今夏の見立てが、微妙に変わりつつある。米メディア「ヘビー」は23日(日本時間同日)、長期離脱中のトリストン・カサス内野手(26)のリハビリ状況を特集した。地元有力紙「ボストン・グローブ」のティム・ヒーリー記者の情報を基に、カサスがティー打撃や軽いトス打撃を含む打撃練習の初期段階に入ったと紹介。昨年5月以来、メジャーの試合から遠ざかる大砲にとっては確かな前進だが、実戦形式の打撃練習、模擬打席、マイナーでのリハビリ出場など、復帰までにはいくつもの関門が残る。

 カサスは2023年に132試合で打率2割6分3厘、WAR2・2を記録し、主軸候補としての期待を膨らませた。だがその後は肋軟骨の損傷、膝蓋腱断裂、腹部の張りと故障が連鎖。前進しているとはいえ、現実的な照準は来季開幕と見られ、戻ってもかつての破壊力をすぐ取り戻せる保証はない。

 そこで浮かび上がるのが吉田の立場だ。かつてはカサスと打撃重視の起用枠で重なり、レッドソックスが8月3日(同4日)のトレード期限前に整理へ動く場合、吉田が放出要員の筆頭格と見られていた。今季もコンスタントに出場機会を得ながら、相手を震え上がらせるほどの爪痕を残しているとは言い難い。

 ただし、話は単純ではない。吉田はレッドソックスと結んだ5年総額9000万ドル(約135億円)の大型契約が来季まで残り、平均年俸は1800万ドル(約27億円)。2026年の総年俸も1860万ドル(約27億9000万円)に上る。トレードをまとめようにも、この高額年俸を丸のみする球団は限られ、レッドソックス側が大幅に負担しなければ対価も見込みにくい。買い手側からすれば、守備や機動力よりも打撃で結果を求めるタイプだけに、費用対効果の見極めは一層シビアになる。

 ならば売り急ぐより、打線の底上げ要員として抱えた方がまだ現実的――。球団内でそうした計算が働いても不思議はない。ア・リーグ東地区最下位に沈むチームは、21日(同22日)のマリナーズ戦に1―3で敗れるなど「売り手」転換が現実味を帯びる苦境にある。それでもカサスの復帰が来季にずれ込み、復帰後の不確実性も消えない以上、吉田の今夏放出はまとまらず、見送りとなる公算が高まっている。ボストンに残る理由が成績ではなく契約条件というのは皮肉だが、吉田にとっては巻き返しの時間を手にすることにもなる。