やはり額面通りには受け取れないのかもしれない。ヤンキースのブライアン・キャッシュマンGM(58)がアーロン・ジャッジ外野手(34)の離脱を受け、緊急補強の可能性を否定した発言が逆に波紋を広げている。ジャッジは肋骨の負傷で戦列を離れ、再検査は4~6週間後。衝撃の長期離脱はすでに既報済みだが、問題はその穴をどう埋めるかだ。

 米メディア「ヤードバーカー」は8日(日本時間9日)、キャッシュマンGMが米放送局「CBSスポーツ」に対し「トレード期限に影響するとは思わない」と語ったと伝えた。同GMは「彼が戻ってくると見込んでいる以上、それがトレード期限に影響するとは考えられない。戻るまで、そのポジションをしっかり守る必要があるだけだ」と説明。ジャンカルロ・スタントン外野手(36)の復帰見通しや、リーグ屈指の先発ローテーションを支えに、現有戦力で耐える構えを示した格好だ。

 ただし、これで周辺が静まり返るほど、ブロンクスの空気は単純ではない。ヤンキースは8日(同9日)時点で39勝26敗。ア・リーグ東地区では首位レイズとゲーム差なしの2位につけ、ポストシーズン争いどころか地区優勝を狙える位置にいる。だからこそ、球団が「動かない」と口にした瞬間から「本当に何もしないのか」という疑念が膨らむ。勝負年の真っただ中で、主砲不在を精神論だけで乗り切るほど、地区争いは甘くないからだ。

 実際、近年のヤンキースは表向きに慎重姿勢を崩さず、期限前に水面下で市場を探ってきた前例がある。フロントが補強を否定しても、それは交渉相手に足元を見られないための〝煙幕〟にすぎない――。そんな見方は根強い。8日(同9日)深夜に放送された米スポーツ専門局ESPNの番組「スポーツセンター」でも、この話題に触れたアンカーが「ヤンキースが『何もしない』と断じるのは早計だろう」との見解を口にした。

 ジャッジの不在は、単なる主砲離脱ではない。相手バッテリーへの圧力、クラブハウスの重心、打線全体の怖さまで変えてしまう損失だ。キャッシュマンGMの言葉通り、復帰まで既存戦力でしのぐのか。それとも否定の裏で、すでに別のカードを握っているのか。名門の沈黙ほど、今は不気味に響いている。