メジャーの監督業が、いよいよ割に合わない商売になってきたということか。開幕から1か月もたたない段階で、早くも2人の指揮官が職を追われた。

 レッドソックスは25日(日本時間26日)、開幕27試合で10勝17敗と低迷したアレックス・コーラ監督(50)を解任。さらにフィリーズも28日(同29日)、9勝19敗と沈んだロブ・トムソン監督(62)を更迭した。米有力紙「ニューヨーク・タイムズ」傘下のスポーツ専門サイト「ジ・アスレチック」は、この異常な解任ラッシュを受け「一体誰がこの仕事に就きたがるのか」と痛烈に論じ、波紋を広げている。

 記事が皮肉を込めたのは、切られた2人の実績だ。コーラ氏は2018年にレッドソックスを世界一へ導き、今季は3年総額2175万ドル(約33億7125万円)の契約延長2年目だった。それでも球団は5人のコーチとともに一掃。傘下の3Aウースターを率いていたチャド・トレーシー氏(40)を暫定監督に据えた。

 トムソン氏も22年途中からフィリーズを率い、同年ワールドシリーズ進出を含む4年連続ポストシーズン進出を果たした功労者。通算勝率5割6分8厘は球団史上屈指の数字だったが、3億ドル超(約465億円超)の高年俸軍団が大失速すれば、矛先はベンチに向いた。

フィリーズの指揮官を解任されたロブ・トムソン前監督(ロイター)
フィリーズの指揮官を解任されたロブ・トムソン前監督(ロイター)

 フィリーズは後任にドン・マッティングリー暫定監督(65)を指名した。だが、その人選にも皮肉が漂う。球団の編成トップ、デーブ・ドンブロウスキー編成本部長(69)は、先に解任されたばかりのコーラ氏にも接触したとされる。つまり、28試合で切った監督の後釜に、27試合で切られた監督を招こうとした構図だ。

 ジ・アスレチックは、かつてMLBでは各球団幹部が戦没者追悼記念日前後を見極めの目安にしていたと指摘する。ところが今や、4月のうちに監督交代へ踏み切る時代になった。しかも監督は選手編成に大きな権限を持たず、勝てばフロントの手柄、負ければ現場の責任にされやすい。監督業の少ないメリットとして「高給」と「メディア露出」はある。だが、安定はない。「こんな因果な職業を、それでも誰が引き受けるのか」と同メディアは指摘している。

 メジャーのベンチは今、栄光の座からリスク含みの「危険な中間管理職」へと姿を変えつつあるようだ。