マイアミの悲劇だ。2度目の連覇を目指した侍ジャパンは14日(日本時間15日)のベネズエラ戦(ローンデポ・パーク)に5―8で敗れ、WBCを史上最速となる準々決勝敗退という形で大会を去ることに。大谷翔平(31=ドジャース)を筆頭に、8人のメジャーリーガーを揃えて臨んだ「最強軍団」はなぜあっけなく姿を消したのか? 検証テーマは「大谷という巨大すぎる恒星が及ぼす作用と反作用」。唯一無二のユニコーンの存在は、現在のチーム内外においてあまりにも大きすぎた――。
大会4試合出場で打率4割6分2厘、3本塁打、7打点、OPS1・842という圧倒的な打撃スタッツは、大谷が現在進行形で球界の頂点に立っていることを雄弁に物語っていた。3年前の前回大会決勝戦で、米国との対決を前に「今日だけは憧れるのをやめましょう」と侍ナインを鼓舞した日本球界の最高傑作はその後、3年連続でシーズンMVPを受賞。名実ともに世界中から「憧れられる」アイコンへと立場を変えている。
だからこそ対戦各国は「打倒オオタニ」という極めて明快なテーマの下に結束し闘志を燃やす。象徴的だったのは5―2の3点リードで迎えた4回一死一、二塁の第3打席。デヘスス―ペレスのバッテリーが大谷を空振り三振に打ち取ると、ベネズエラ側のベンチとスタンドはまるで優勝したかのようなお祭り騒ぎに。「世界最高の打者を打ち取った」という高揚感がボルテージを一気に押し上げると、直後5回の攻撃でガルシアが2ランをマーク。5―4の1点差にまで詰められた。
その大谷をフォローするための存在として期待されていた近藤(ソフトバンク)の打撃不振や、鈴木(カブス)の負傷退場はチームの歯車を狂わせた。間断なく続くベネズエラファンたちの熱狂的な大歓声や大ブーイングも、国際経験が乏しい若手ナインたちの心身を真綿で首を絞めるように疲弊させていく。
続く6回にアブレイユに3ランを許し5―7とスコアをひっくり返されると、侍オフェンス陣はどこか淡泊な空回りを続けたままゲームセットを迎えるしかなかった。
戦力的な側面はもちろんのこと、スポンサーの確保なども含めた興行面においても大谷は必要不可欠な存在だった。井端監督を筆頭にしたコーチ陣やチーム運営サイドも、最大限のリスペクトをもって、本人や所属球団のドジャースと折衝を続けた。大谷本人も「特別扱いはしないでほしい」と井端監督に要望しチームビルディングに専念。北山(日本ハム)、森下(阪神)らWBC初出場組の若手とも積極的な交流は何度も話題になった。
この日の一戦で「2番・右翼」としてスタメンに抜てきされた佐藤(阪神)も「本当に気さくに話しかけてくださった」と感謝の言葉を口にしたように大谷は決して孤立した存在ではなかった。それでもチーム全体が「最後まで大谷個人への崇拝や依存から脱却しきれなかった感も否めない」と球界関係者は指摘する。
前回大会の優勝決定シーンで「投手・大谷」がトラウト(エンゼルス)を空振り三振に打ち取ったシーンは、大会を象徴する一幕として多くの野球ファンの記憶に刻まれた。3年後の準々決勝は9回二死で打席が回ってきた大谷の遊飛でゲームセット。勝利の歓喜に沸くベネズエラナインと、無念の表情で虚空をにらんだ大谷のコントラストはあまりにも鮮烈で、まるで何かを示唆しているかのようでもあった。












