3月開催の第6回WBCを前に、強敵・米国代表の合言葉が早くも「打倒オオタニ」になりつつある。前回大会決勝で日の丸を背負った大谷翔平(31=ドジャース)に〝してやられた〟記憶が消えない中、米国のドナルド・トランプ大統領(79)が「報奨金」を準備しているとの情報も飛び交っている。その一方で侍ジャパンは27日、壮行試合(バンテリンドーム)で中日と対戦し5―3で勝利。ベンチで見つめた大谷が空気を一変させた中、熱狂の裏側で今後何が動こうとしているのか――。

 侍ジャパンの「主役」は、グラウンドに現れた瞬間から空気を変えた。中日戦の試合前練習に、大谷が参加。2023年大会で日本代表を世界一に導いた立役者で大会MVPも獲得したスーパースターが再び日の丸のユニホームを身にまとった。日米のみならず各国メディアのカメラマンからファインダーを一斉に向けられながら、黙々と調整を進めた。

 場内の熱視線は打撃ケージに入った瞬間、さらに一点へ収束した。乾いた音で放たれる打球は規格外の飛距離でスタンドへ突き刺さり、28スイング中11本の柵越え。練習の一打が、そのまま〝事件〟になる。対戦相手となった中日の面々も大谷のスイングにくぎ付けとなり、打球が美しい放物線を描くたびに大歓声とどよめきが交錯した。現役メジャーリーガーが集うWBCでも「OHTANI」の存在感はまさに別格――。そう感じさせるだけの時間だった。

「別格」であればあるほど、米国側から見れば最大の標的になる。第5回WBCの決勝戦であまたのMLB選手をそろえ最強軍団と称されていた米国は侍ジャパンと相対し、二刀流・大谷(当時エンゼルス)の前にひれ伏す格好となった。9回、1点差の最終局面でストッパーとしてマウンドに立った大谷は当時同僚のマイク・トラウト外野手(34=エンゼルス)を三振に仕留め、日本を頂点の座に導いた。その舞台となった米フロリダ州マイアミのローンデポ・パークは、今大会でも同じ決勝ラウンドの会場として予定されている。ディフェンディングチャンピオンの日本と、前回大会よりもスケールアップしたMLBオールスターメンバー級で固める米国が準決勝以降、同じシチュエーションで再戦する可能性は高い。

 そして、今回の米国代表には「最初から大谷を想定している」との声がある。MLB関係者の一人は「前回は〝ストッパー・オオタニ〟によって伝説を作られた。次は、その物語ごと奪い返す発想になる。今大会はスラッガーとして試合に出てくる大谷を中心に見立てを組み、どうやって攻略するかどうか。あらゆるシミュレーションを立てることになる」と語る。勝ち方の設計図に「大谷対策」を埋め込む。それが今回の米国のベースになる、という算段だ。

 そして、そこへ政治が絡むという〝仰天プラン〟も浮上している。愛国色を前面に出すトランプ大統領が、米国代表に17年大会以来2度目の世界一を目指させ、達成時には総額100万ドル(約1億6000万円)ともささやかれる報奨金を用意する――。あくまでも現時点では未確認情報とはいえ、政権がスポーツの勝利を「国家の高揚」に接続しようとする空気は米国内で確かに強まっている。

 別の球界関係者も「トランプ大統領が『世界一』を欲しがるなら、国民に最も伝わる図は『ディフェンディングチャンピオン・ジャパンを倒した』という形。その相手の顔が大谷なら、なおさら象徴になりやすい」と打ち明ける。事実としてトランプ大統領は、ミラノ・コルティナ冬季五輪で金メダルを獲得した米国の男子アイスホッケーチームを一般教書演説に招くなど愛国主義を前面に押し出している。

 つまり、米国が描きたいのは「打倒・侍」ではなく「打倒・大谷」で完結する勝利の絵だ。侍ジャパンは優勝候補であり、米フロリダ州マイアミで行われる決勝ラウンドへ再び舞い戻る公算も大きい。まさに大谷は、その「象徴的存在」。トラウトが屈した前回のラスト1球を奪い返すように大谷を封じて世界一に返り咲けば、トロフィーの先に「リベンジの物語」が残る。

 今大会では米国が大谷から三振を奪い返し、歓喜の輪を作る――。そんなトランプ大統領の〝狙い〟は果たして結実することになるのか。もちろん受けて立つ大谷としては、今回のWBCでも侍ジャパンとともに「最強」を証明するだけだ。