井端弘和監督(50)率いる侍ジャパンは18日にWBCへ向けた宮崎事前合宿(サンマリン)でライブBPを行い、北山(日本ハム)、隅田(西武)らが登板。WBC本大会で採用されるピッチクロック、ピッチコムへの順応に重きを置きながら、今キャンプ初の実戦形式練習に取り組んだ。

 その様子を井端監督は遊撃手の後方から見守っていた。「いや、まあバッターボックスに立つわけにはいきませんからね」と照れ笑いを浮かべながらも「何となく見慣れたところから見ていると『あっ、いいボールだな』とかが一番分かりやすいので。ショートとのところから見る方が何となく自分の中にはバローメーターがある。そこから見たかっただけです」とその意図を説明する。

 井端監督の現役時代の主な定位置は言うまでもなく遊撃。球史にその名を残す二遊間コンビ「アライバ」の片翼として、荒木雅博氏(中日OB)とともに美守を連発した名手中の名手だ。

 解析機器の飛躍的な発展やAIの活用などでさまざまなデータが数値で可視化されるようになった今、生身の人間の感性があらゆるスポーツに入り込む余地は、徐々に狭まっている。それでもこの日、井端監督がプロとして1500試合以上立ち続けてきた遊撃の後方に、指導者としての「定点」を改めて定めた事実は興味深い。

 この日行われたライブBPでは二塁手や遊撃手もピッチコムを装着して守備に就いた。「あると楽ですよね。捕手のサインを毎回見ないでいいぶん、違うところにも気を遣えます。二遊間にはありがたいことですよ」と自然体で時代の変化を受け入れる井端監督だが、世界の強豪たちがしのぎを削るノックアウトラウンドでは、AIがはじき出す期待値やデータなどでは説明できない流れの変化をかぎ分けながら「尋常ならざる采配」を何度も迫られることになる。

 データや装置が勝敗を導くようになりつつある令和の球界。それでも最後の一手を決めるのは生身の人間だけが感じ得る、一瞬の違和感とひらめきだ。遊撃から世界を見つめ続け、黄金期落合竜のディフェンスを支配した男は、彼我の勝敗が交錯する瞬間を知っている。