野球史を塗り替えるはずだった超大型トレードは、水面下で確かに動いていたー―。
米有力紙「ニューヨーク・タイムズ」傘下のスポーツ専門サイト「ジ・アスレチック」は21日(日本時間同日)、敏腕記者として知られるケン・ローゼンタール氏の署名記事で、ドジャースの大谷翔平投手(31)がエンゼルス時代の2023年夏、レイズへ移籍する可能性が真剣に話し合われていた舞台裏を報じた。
焦点は23年8月1日(日本時間23年8月2日)のトレード期限前だ。当時の大谷は同年オフにFAを控えた「レンタル選手」だったが、レイズは獲得に前のめりだった。交換要員として名前が挙がっていたのは、当時2A所属だったジュニア・カミネロ内野手(22)と、1Aにいたカーソン・ウィリアムズ内野手(22)。エンゼルスは追加の有望株を求め、レイズ側も別の若手を含める用意があったという。
レイズが本気だった理由は明白だった。同年は開幕13連勝、さらに27勝6敗とロケットスタートを切りながら、期限前にはやや勢いを落としていた。それでもア・リーグ屈指の強豪で、大谷を加えれば先発陣と打線を一気に底上げできる。残り年俸約1000万ドル(約15億9000万円)の負担は小さくなかったが、球団幹部はワールドシリーズ制覇への切り札となり、低迷する地元市場にも火をつける存在と見ていた。
だが、最後に首を縦に振らなかったのがエンゼルスのアルテ・モレノ・オーナー(79)だった。エンゼルスは同年7月26日(同27日)時点で52勝49敗、ワイルドカード争いでは3・5ゲーム差。プレーオフ進出確率は16・7%にとどまっていたにもかかわらず、大谷を残す道を選び、ルーカス・ジオリト投手(31)、レイナルド・ロペス投手(32)、ランデル・グリチェク外野手(34)らを補強した。しかし勝負手は空振り。同年8月最初の26試合で19敗を喫し、月末にはぜいたく税回避へ主力を一斉放出する迷走ぶりをさらした。
結果だけ見れば、レイズにとっては「成立しなかった取引」が最善だった。大谷は同年8月23日(同24日)に右肘じん帯を損傷して投手としてのシーズンを終え、9月には腹斜筋も痛めた。レイズも99勝を挙げながらワイルドカードシリーズで敗退したが、カミネロとウィリアムズは残った。特にカミネロは昨季45本塁打を放ち、球界屈指の若手大砲へ成長した。
結局のところエンゼルスに残ったのは大谷をFAでドジャースへ失った現実と、補償のドラフト指名権だけだった。世界最高の選手を手放した代償の大きさは幻の交換要員たちが輝きを増すほど、アナハイムに重くのしかかっている。













