リーグ連覇と日本一奪回を果たした2025年のソフトバンク。結果だけを見れば圧倒的だが、開幕直後は主力に故障者が相次いで最下位に低迷するなど、決して順風満帆な戦いではなかった。ホークスOBで本紙評論家の加藤伸一氏が、26年を見据えたチームづくりを前編、後編の2回に分けて語る。前編は野手陣を中心に、勝ち続けるために求められる戦力の厚みと、世代のつなぎ方に焦点を当てる。

【インハイアウトロー・加藤伸一】25年は結果だけを見ればリーグ連覇と日本一だけど、内容は決して楽なシーズンではなかった。特に開幕直後は主力に故障者が続出して、想定していたオーダーがほとんど組めなかった。これは偶然ではないと思っている。

 なぜ開幕の段階で、これだけコンディション不良の選手が出たのか。キャンプから開幕までの準備や調整の仕方、シーズンをどう見据えていたのか。そこを検証せずに、優勝したからいいで終わらせてしまえば、同じことはまた起きる。

 今のホークスはS組という形で、実績ある主力をある程度、個別調整に任せるスタイルを取っている。言われなくてもやる選手たちだし、そこに甘えがあるとも思わない。ただ、結果として開幕に間に合わなかった選手が複数出た以上、そのやり方が本当にベストだったのかは見直す必要がある。S組そのものが悪いとは言わないが「任せる部分」と「管理する部分」の線引きは、もう一段はっきりさせないといけない。

 だからといって、スタートダッシュ至上主義になる必要があるとも思っていない。これだけの戦力があるチームが、序盤から無理に飛ばす必要はない。26年はシーズン序盤を5割で進められれば十分で、143試合をどう戦い切るかを見据えた戦い方が重要になる。シーズンは長いし、強いチームほど、どこかで必ず流れは来る。その時に力を出せる状態を作っておくことの方が大事だ。

 野手陣に目を向けると、柳田、山川、近藤という主軸は今もリーグトップクラスの力を持っている。ただ、年齢や体の状態を考えると、1年間フルでやる前提でチームを組むのは現実的には厳しくなってきている。調子の波も出るし、体のどこかをかばいながら戦う時期も必ず出てくる。その時に「いないから苦しい」ではなく「次がいる」状態をつくっておかなければいけない。

 その象徴的な存在が野村勇と柳町だ。25年はこの2人が一軍でしっかり戦い抜いた。勢いだけではなく、途中で修正しながら結果を残した点は評価できる。ただ、26年は相手のマークも厳しくなるし、研究もされる。その中で、どれだけ数字と内容を維持できるか。ここを乗り越えられるかどうかが、チームの厚みを左右する。

 中堅では川瀬の存在も欠かせない。派手さはないが、チーム事情に応じて複数ポジションを守れて、試合の流れを壊さない。こういう選手がベンチにいるかどうかで、シーズンの安定感は大きく変わる。また、25年に首位打者を獲得した牧原大も33歳という年齢を考えれば、まだフルシーズンを任せられる存在だが、将来を見据えれば負担を分散させる準備は進めておく必要がある。

 さらに内野では広瀬、庄子、外野では笹川、秋広と、若い素材はそろっている。正木も含めて、この世代が一軍に定着してこなければ、3連覇、4連覇という話にはならない。勝ちながら世代交代を進めるのは簡単ではないが、ここを避けて通ることはできない。

 中村晃は25年、本当にチームを救ってくれた存在だった。ただ、腰の手術を受けたことも含めて考えれば、26年も同じ役割を前提に計算するのは違う。最初から戦力として当てにするのではなく、出てきてくれればプラスと考えるくらいでいい。そのくらいの位置づけにしておかないと、若い選手が前に出てこないし、チームとしても先に進めなくなる。

 野手陣は「勝ち続けながら世代交代を進める」という、最も難しいテーマに挑むことになる。ただ、それを可能にするだけの戦力と土台はすでにある。ここを乗り越えられるかどうかが、ホークスが次の時代に進めるかどうかを左右する。(本紙評論家)