米国が3日未明(日本時間3日午後)、ベネズエラの首都カラカスなどを爆撃。ドナルド・トランプ米大統領は米軍の軍事作戦によって、ベネズエラのニコラス・マドゥロ大統領を拘束したと発表した。これにより同国の反米体制は一気に崩壊局面へ向かうとみられるが、3月開幕の第6回ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)は平穏無事に開催できるのか。激変する祖国を背に、WBCベネズエラ代表の動向に注目が集まっている。

 世界情勢が一夜で塗り替えられた。米国のトランプ大統領は3日、ベネズエラのマドゥロ大統領とその妻が拘束され、国外へ連行されたと明らかにした。これに先立って米軍は同日未明、首都カラカスや北部ミランダ州など3州の複数にわたる標的を大規模爆撃。ウゴ・チャベス前政権下から長年続いた反米体制は事実上、強制的に終止符を打たれた形だ。

 この政変はスポーツ界、とりわけ3月開催予定のWBCにも直結する問題を投げかけている。ベネズエラは出場予定国の一つだが、体制崩壊後の混乱は避けられず、統治機構の空白や治安、渡航、行政手続きなど代表派遣を巡る不透明要素は一気に増した。

 もっとも、米国主導の下で民主化へ進む道筋が描かれるのであれば、参加そのものが不可能になる可能性は高くないとの見方もある。マドゥロ体制崩壊後、ベネズエラが国際大会に参加すれば、2月のミラノ冬季五輪に続き、WBCは「新体制下での象徴的な再出発」となる。

 その意味で、野球はベネズエラにとって特別な存在だ。国内での人気は圧倒的で、事実上の「国技」。混乱する祖国の中で、世界に向けて「変わったベネズエラ」を示す舞台として、WBCほど分かりやすい国際イベントはない。だからこそ参加が実現すれば、ベネズエラ側が最強メンバー結成に動く可能性は極めて高い。

 すでに3大会連続出場中で2021年本塁打王&打点王のサルバドール・ペレス捕手(35=ロイヤルズ)を中心に、ホセ・アルトゥーベ外野手(35=アストロズ)、ロナルド・アクーニャJr.外野手(28=ブレーブス)らMLBスターの名が候補に挙がる。大会最強クラスと目される米国、そして前回王者の日本に対して〝牙〟を向け「変革」を結果で世界中に示す――。そんなシナリオを描く声も、周辺では聞こえ始めている。

 一方で現場の指揮官やコーチ、選手たちは、政治とは距離を保とうとしている。米有力紙「ニューヨーク・タイムズ」傘下のスポーツ専門サイト「ジ・アスレチック」が報じたように、前回大会に続き2大会連続でWBCベネズエラ代表を率いるオマー・ロペス監督(49=現アストロズベンチコーチ)は「私たちは悪い人間ではない。ただ野球をしたいだけだ」と語り、あくまで競技に集中する姿勢を強調した。代表チームの現場に携わる関係者の多くはMLBに属し、米国に生活基盤を置く。そうした背景から激変する祖国情勢に心を痛めながらも、野球で希望を示そうと心に誓っている。

 WBCは本来、国境や政治を超えて行われる大会だ。しかし今回、ベネズエラ代表は国際秩序の大きなうねりの中に放り込まれた。無政府状態に近い混乱が続けば、準備や渡航に支障が出る可能性は否定できない。それでも参加がかなえばベネズエラは体制崩壊後、初めてとなる〝国技・野球〟の大舞台で世界の視線を一身に集めることになる。

 今年のWBCで、最も注目すべき国はどこか。その答えは急展開で「ベネズエラ」へと傾きつつある。政治に翻弄されながらも美しきカリブ海諸国の一員でもあり、平和を愛する中南米の民は野球というフィールドで自国の新たな姿を世界に誇示しようとしている。