西武からポスティングシステムでメジャー移籍を目指していた今井達也投手(27)が1日(日本時間2日)、アストロズと3年総額5400万ドル(約85億円)で契約合意に達した。短期高年俸、さらに毎年オプトアウト可能という異例の契約内容は選手側にとって将来の大型契約への布石となる一方、日本球界には別の波紋を広げつつある。今井、そしてホワイトソックス入りした村上宗隆内野手(25)に続く、この契約形態は今後のポスティング制度そのものを揺るがしかねない――。
今井のアストロズ入りは、1980年以降でワールドシリーズ制覇2回を含め、通算24回ものポストシーズン進出を誇る名門球団との契約そのもの以上に「形」が注目を集めている。3年総額5400万ドルという数字だけを見れば決して小さな契約ではないが、米メディアで事前に最大で6年1億5000万ドル(約235億3000万円)などと取り沙汰されていた長期の超大型契約には届かず、3分の1程度にまで抑え込まれた。
代わりに盛り込まれたのが、短期高年俸とオプトアウト条項だ。球界関係者の間では、この流れを歓迎する声もある。「今後、日本人選手がポスティングでメジャーに行くなら今井、そして村上のような契約が主流になるだろう。まずは最初の短期間で力を証明できれば、FAとなった際には成績次第でルーキーイヤーでは想像もつかなかったような超大型契約をつかめたり、別の強豪球団へ移籍できる道も開けたりとプラス要素が広がる。将来的には面白い選択肢だ」という見方だ。
一方で、より現実的な指摘も少なくない。今井については「奪三振王は1度あるが、与四球が多い投手。メジャー球で再び荒れる可能性を考えれば、球団が短期契約でリスクを抑えたのは自然」との声が出ている。初年度からの大ブレークを前提とせず「まずは適応力を見る」というトライアウト的な意味合いが強い契約とも言える。
この構図は、ヤクルトからホワイトソックスに移籍した村上にも重なる。村上の代理人は「エクセルスポーツ」のケーシー・クロース氏。今井と代理人契約を結ぶスコット・ボラス氏のような「剛腕代理人」ではないにせよ、結果的にまとめ上げたのは2年総額3400万ドル(約53億3600万円)という短期高年俸契約だった。最初の1~2年を〝MLB適応期間〟と位置づけ、年齢を重ねないうちにFA市場へ出る――。その道筋は選手と代理人、獲得球団の三者にとって合理的だったと言える。
しかし、日本側にとっては事情が違う。短期契約は総額が抑えられるため、送り出した球団側に支払われる譲渡金も比例して低くなる。譲渡金は西武が997万5000ドル(約15億4600万円)となる見込みで、ヤクルトも657万5000ドル(約10億3000万円)といずれも円換算で10億円台にとどまった。
西武、ヤクルトにとって、それぞれエース、主砲を手放した見返りとしては当初のもくろみより30億円以上も低くなっているだけに、決して十分とは言い難い。「育成しても譲渡金が少ないまま出ていくなら、ポスティングを認めるメリットが薄れる」という声がNPB各球団の内部で強まるのも無理はない。
実際に「この流れが定着すれば、来季以降はポスティングを渋る球団が増えるのではないか」「制度そのものを見直す時期に来ている」との意見は、日米両球界関係者の間から早くも聞こえ始めている。球団側が譲渡金を事前に設定する案など、制度改正を求める声が高まるのは必然だろう。
今井の契約は選手個人にとっては、挑戦とチャンスに満ちたものだ。しかし、同時にポスティング制度の〝ゆがみ〟を改めて浮き彫りにしたケースでもある。短期高年俸という〝新常識〟が、日本球界にどんな変化をもたらすのか。












