海の向こう側でも、日本の3冠王の決断については「意外な選択」ととらえられているようだ。ヤクルトからポスティングシステムを使ってメジャー挑戦を目指していた村上宗隆内野手(25)が、新天地として選んだMLB初舞台は〝最弱球団〟のホワイトソックスだった。低評価の理由、そして短期契約の背景――。これらをひもといていくと見え隠れしてくるのは「2年後」という、村上側が見据え直した〝ワード〟だった。

 MLBへ戦いの場を移す村上の新たな拠点が、シカゴに決まった。米主要メディアの合意報道を受ける形で、ホワイトソックスも21日(日本時間22日)に村上の獲得を正式発表。契約は2年総額3400万ドル(約52億7000万円)となり、22日(同23日)には本拠地レート・フィールド内で村上の入団会見も行われた。

 ただ、日本プロ野球界で史上最年少の3冠王に輝いた実績を誇るスター選手としては短期契約で、やや物足りなさを感じさせる数字であることも否めない。

 下馬評では米移籍情報サイト「MLBトレード・ルーマーズ」が契約予想を8年総額1億8000万ドル(約284億円)とするなど当初、軒並み高かったにもかかわらず村上の市場評価はなぜここまで伸び悩んだのか。米メディア「ヤードバーカー」や米老舗誌「スポーツ・イラストレイテッド」の電子版「ON SI」が共通して指摘するのは、セイバーメトリクス的な〝警戒信号〟だ。

 最大の懸念は三振率。近年の村上はNPBで打席の3割近くで三振を喫しており、ゾーン内コンタクト率もMLB基準では低水準と分析されている。日本では圧倒的だったパワーも、MLBの平均球速や独特の高回転ボールに対応できるかは未知数。さらに前出「ヤードバーカー」は「直近の2023年のWBCでは、世界を驚かせるほどの結果を残せなかった点も評価を慎重にさせた」と指摘している。

 その結果、ヤンキース、メッツ、ドジャースといった常勝を義務付けられる「金満球団」は、長期大型契約から次々と距離を置いた。評価は高いが、リスクも大きい。「それが村上に対するMLBの多くの球団の冷静な見立てだった」と前出「ON SI」も同様に論じている。

 そうした中で手を差し伸べたのがホワイトソックスだ。3年連続で100敗以上を喫し〝断末魔〟にあえぐ同球団にとって、村上は「低リスク・高リターン」の存在。短期契約で戦力化できればもうけもの、失敗しても傷は浅い。一方の村上側にとっても、出場機会を確保しながら自らの価値を証明できる環境だった。

 この村上とホワイトソックスの契約を「ON SI」は「事実上のトライアウト」と表現する。つまり本番は「来年以降」だ。村上がMLBの投手に対応し、懸念材料を拭い去って出塁率と長打率でルーキーイヤーの26年シーズンで数字を残し、2年目も継続させれば――。27年オフのFA市場、あるいは直前となる同年夏のトレード期限のタイミングにおいて一気に村上の評価が跳ね上がる可能性があるという。

 特に当初獲得に動こうとしていたヤンキースは将来的なDH枠や打線再編と照らし合わせ、遠巻きに村上をチェックし続ける立場だと伝えられている。今オフは見送りも、来年以降にあらためて村上を再評価していく。このようなヤンキースの〝したたかな方針転換〟に関し、前出「ON SI」も「それが強豪球団の現実的な戦略だ」と解説している。

 村上陣営も、すでにかじを切った。テーマは「2年後」。ホワイトソックスで課題と向き合い、MLB仕様の打撃を身につけた上であらためて市場に出る。そのための2年間だ。

 低評価、最弱球団、短期契約――。逆風はそろった。だが裏を返せば、ここからは上がるしかない。村上のリアルな勝負の結果は「2年後」に出る。